牛の首5 牛ノ首衆
今日泊君は、嘘やハッタリをするような人に見えませんでした。
それなのに私は、今日泊君の忠告を重大なこととして認識していませんでした。
そして私は、あの恐ろしい話を聞いてしまったのです・・・
みんなの「早く、その話を聞かせろ」という声に今日泊君は、軽く頷き、再び話し始めました。
「水晶で作った頭蓋骨や、加工された人間の頭蓋骨のこと知ってるかな」
「日本にも昔、人間の頭蓋骨を加工する人たちが居たんだ」
「牛ノ首衆と呼ばれる人たちで、最初は、牛の首を切り取り、神様に、お供えしてたらしい」
「けど、いつからか人間の首を切り、肉を取り去ってから漆を塗り、金箔を貼り付けるようになったんだ」
「牛ノ首衆は、自分達の加工した頭蓋骨を使い、色々な儀式を行うようになったみたいで、自分達の行う儀式によって、色々と不思議なことが出来ると信じていたみたいなんだ」
「例えば病気を治したり、天気を操ったり」
「また、人を呪い殺したり、病気にしたりといった、人に害を与える儀式もあったようだけど、そういった儀式を無闇に行わない掟があったらしい」
牛の首6 皆殺し
今日泊君の話を聞いていた私は、全く恐いと思いませんでした。
しかし後から、それが大きな間違いだったと、思い知らされたのです・・・
「牛ノ首衆は、仏教に対して好意的だったらしい」
「特に座禅は、人々の心を清くすると言って、永平寺に協力的だったんだ」
「しだいに、念仏や仏教の儀式を行う、本願寺の真宗門徒達が勢力を強めてきて、永平寺は、段々と寂れていったらしい」
「真宗門徒達も、牛ノ首衆の儀式に興味を持っていて、本願寺の高層が牛ノ首衆と親睦を深める活動をしていたんだ」
「本願寺の儀式には、牛ノ首衆の影響を受けた儀式が、今でも残っているそうだよ」
「でも、外国からキリスト教が伝えられ、キリスト教が次第に力を付けてきたんだ」
「本願寺は、キリスト教徒を皆殺しにするため、キリスタン大名達に宣戦布告をしたんだよ」
「この戦争は、一向一揆と呼ばれる壮絶な戦いだったらしい」
「殺生を嫌う牛ノ首衆は、本願寺に反対し、一向一揆を終わらせようと、何度も真宗門徒達に交渉を持ちかけたそうだ」
「でも本願寺は、牛ノ首衆を煙たがり、一向一揆のさなか、牛ノ首衆を皆殺しにしてしまったんだ」
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