[海底で]
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俺はうす暗い海底を歩いていた。上に海面がきらめいて見える。
海底のなだらかな斜面の下の方から、誰かがゆっくりこちらに向って歩いてくる。
円筒形の金属マスクを被り、だぶだぶのゴムのようなもので全身をつつんだ人間が、
右手に長い棒をもって、ゆっくりこちらに向って歩いてくる。円筒形のマスクの後
からはゴム管が出ていて、それが背中のボンベのようなものに続いている。足には
重そうなブーツ。右手の長い棒の先には、なにか箱のようなものがついている。
古いロボットのような姿。

それは一人ではなかった。見ると、同じ姿をした10人ほどのロボット人間が、
左右に一列にひろがって、同じようにゆっくり歩いてくる。みな右手に、箱の
ついた長い棒をもって。

一人のロボット人間のマスクから、突然、大量の泡が吹き出した。そのロボット
人間は、もがくように胸元をかきむしり、膝を折ってうずくまると、閃光とともに
音もなく爆発した。血肉と白煙が海中に飛散した。俺が驚いて呆然としていると、
別の一人もまた、同じように大量の泡を吹き出してもがき苦しみ、音もなく爆発した。
そうして、10人ほどいたロボット人間たちは、次々ともがき苦しんでは爆発して
いった。海中には、飛散した彼らの血と肉が大量に赤黒くただよった。

「○○○○・・・」

また、先ほどの言葉が聞こえた。それが何であったのかは覚えていないが。


俺は夢の印象が強烈で、翌日はほとんど誰とも話さなかった。まわりが大はしゃぎ
しているのに、俺だけがめずらしく静かなので、担任の先生が体の具合を心配して
くれたほどだ。

夢のことは長いこと忘れていたが、後年、作家の城山三郎が自著で、太平洋戦争
末期に人間を機雷代わりに使う特攻作戦があった旨を書いているのを読んだ。
この特攻作戦の兵士の装備が、俺が夢に見たのとほぼ同じだった。
もっとも、この部隊が訓練していたのは神奈川県の横須賀で、俺が行った
「臨海教室」は千葉県の○○だから、場所はちがっている。
横須賀から東京湾の底をあるいて千葉まで来たって事もないだろうが・・。


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