[屍伯爵]
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渋々地下行きに同意した異と共に階段を降りていった。
下にはまたドアがある。木製であちこち欠けていた。俺は異が
ついて来てるのを確認してからゆっくりとノブを回した。
クイ〜ッとドアが開き、地下室の内部が露になった。俺は入る前に
手で近くの壁を探って電気のスイッチを探した。すぐに見付かった。
捻るとジジーと音がしてからボヤ〜ッと蛍光灯がともった。

俺と異はドアのとこから中を覗き込んだ。真ん中に広いテーブルが
あり、何やら動物の入った小型の檻や虫籠らしき物が沢山乗っていた。
四方の壁にも同じような籠や段ボール箱が積み上げられている。
俺たちは中へ入った。テーブル上には犬・猫・蛇・甲虫などが
籠の中でうごめいていた。
「ようこそ」
テーブルに気を取られている俺たちは不意に後ろから話しかけられて
飛び上がった。振り返ると伯爵が薄ら笑いを浮かべて立っていた。続く
二の句を告げずにいる俺たちの脇を通って伯爵はテーブルの側に来て
籠の一つを指した。それは一見何も入ってないように見えたが
よく見ると小さな虫が飛び回っている。蠅か何かのようだ。
「これをね、こうする」
伯爵は籠の蓋を少し開けて骨と皮だけの手を入れたと思ったら
すぐに出した。蠅を掴んでいるようだ。まさかの早業に俺は
ひそかに驚いた。異も目を丸くしている。伯爵はその手を蠅の籠の
隣の籠に持っていき蓋を開けて中に差し入れた。その中には
トノサマガエルが入っていた。伯爵は握っていた手を放した。
蠅はもう潰れていたらしく、下に落ちた。するとカエルがのそのそ
這ってきてペロリと飲み込んだ。それを見て伯爵は俺たちに向かって
ニヤリとしてみせた。

伯爵の手はまだ止まらない。今度はカエルを掴み出してその隣の
籠に入れた。中にいるのは蛇だった。一飲みにされた。伯爵はまた
こちらに笑いかけた。俺は不思議と怖さをあまり感じなかった。
目の前で行われている事への好奇心の方が勝っていた。異も
同じ様子だった。伯爵の動作は続く。今度は蛇を掴み出した。
か細い腕に巻き付いている。伯爵は顔色一つ変えずそのまま今度は
出入り口から見て一番奥の壁の方へ歩いていき、積み上げられた
段ボールを下ろし始めた。蛇が巻き付いた腕で。やがて
目当ての段ボールを見付けたらしくガムテープをはがし始めた。
下ろされた段ボール箱の奥からは窓が顔を出していた。
その段ボールから出てきたものを見て俺は目を疑った。それは
何と小型のワシだった。おかしい。こんな小さな段ボールで
飼えるわけがない。だとすれば…。

続く