[屍伯爵]
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しばらく二階をうろついたが部屋の半分には固く鍵がかかっており、
残りの半分はがらんどうで床にうっすらと埃が溜っているだけだった。
俺たちは期待外れな気分になって階段を降りた。その時短気な亜が
「ああ〜糞つまんねー」
と言いながら二段飛ばしで降り始めた。するとバリバリドーンっと
大きな音がして亜が階段の裏に落下した。俺と異はびっくりして
穴を避けてそろそろと階段を降り、裏に回った。亜は尻餅をついて
痛みにうめいている。俺と異が両側から立たせてやると、
顔をしかめたまま、左を指差した。そちらに目をやると
薄暗がりの中に黒く塗り潰したドアがおぼろ気に見えた。

俺は亜を見た。こいつが落ちてから俺と異が助けに行くまで
せいぜい数十秒だったはずだ。その短い間しかも痛みに気を
取られながらよく暗がりのドアに気付いたものだ。短気な
スポーツバカだとばかり思っていたのに。ともかく俺たちは
そのドアへ足を踏み出した。続く

ドアはあっけないほど簡単に開いた。地下に続く階段がある。
「俺待ってるからお前ら二人行ってこいよ」
亜が下を覗き込みながら行った。俺と異は亜を見た。おかしい。
俺は突差にそう思った。いくら打ち身で歩きにくいからとはいえ
自分から残るなどと言い出すような奴じゃない。担いででも
連れてけと言いそうなものだが。俺は異を見た。同じくいぶかしそうな表情を浮かべている。

俺は亜に行った。
「お前それでいいの?中に何あるか見たくないわけ?」
亜はそっけなく言った。
「仕方ないだろ。一人じゃ歩けねーし、階段なんて降りらんないよ」
「…」
俺は黙って亜の顔を見た。その時異が
「…帰ろう」
と言った。不安になってきたのだろう。いや最初から不安だった
のかも。それを聞いて俺は少し慌てた。ここまで来たなら降りて
みたい。ここで帰ればまた来る気になれるかわからない。
俺は断固行こう(流石に一人じゃ行けない)と異に言った。

続く