[屍伯爵]

これ小学校5年の時の話。
当時町外れに古びた館があってそこに仙人みたいなじいさんが
住んでいて、俺たちは「屍伯爵」と呼んでいた。ある夏の日、俺と
友達の亜と異の3人で、伯爵の館に探検に行くことにした。
あの広い館で半死人みたいなじいさんが何をしているのか
前々から興味があったからだ。流石に夜は気味が悪いので
行くのは午後にした。それでも見付かる心配はないと思った。
というのも伯爵は昼間は寝ていて陽が落ちてから活動を始める
という噂がまことしやかに流れていたからだ。広い館だし
見付かることもあるまい、よしんば見付かってもじいさん一人
どうにでも逃げられるとの気持があった。そして俺たちは館へ向かった

館の周りは俺の背丈ぐらいある雑草が繁っており、丸っきりの廃墟
にしか見えない。俺たちは片方がひしゃげた門扉を押し開けて敷地に
侵入した。頭を上げて館の前面を見渡した。ヒビが入った窓ガラスが
いくつかある。窓の後ろに人影は見えなかった。亜が玄関のドアを
押した。ギイ〜ッとした音が鳴り響いて俺たちはビクっとしたが、
すぐに辺りは静まり返り、誰かが向かってくる足音もしない。
どうやら伯爵は本当に眠っているようだ。或いはいないのかも。
俺たちは少し大胆になってズカズカ中に入って行った。
そこはホールになっており正面に広い階段があった。俺たちは
そこを上って二階へ向かった。

続く