[添い着]
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涙で目がにじんできた。しゃがんだ足が痺れてきた。
すると、階段の方からぞろぞろと男達が歩いてきた。下を移動する
足音は聞こえなかったからビビって尻餅を付きそうになったが
何とかふんばった。男達の内三人が肩に何かを背負っていた。
一つはあの青い物体だったが残りの二つは黒いごみ袋のような
ものだった。中身は考えるまでもない。男達は近付いてくる。
間もなくここを通過する。僕は祈った。しかし足の震えは
最高潮に達している。しかしツツジの枝を掴む訳にはいかない。
来た!通りすぎる…ほっとしたその時、強い風が吹いて青のシートが
わずかにまくれ上がった。僕は見てしまった。サンダルを履いた足。
山口…。もう限界だった。僕はゆっくりと後ろに倒れていった。
「誰だ!」
(もう駄目だ…)
男の一人が倒れている僕を見付けて引きずり出した。
僕は涙や涎を流しながら口をパクパクさせていた。
男達に取り囲まれた。その中の一人のがっしりした初老の男が
しゃがんで顔を覗き込むようにして聞いてきた。
「あんた、あそこで何してた」
僕は頭が狂いそうになりながら答えた。
「うっ、うっ、うんこ、を」
「本当か?」
「は、はい」
背後から肩に手が置かれた。首筋をぐっと掴まれた。
「見たのか…」
「いひっ、いっ、いひぇ、み、みぢてません」
首を掴む力が強くなった。頭が痺れて意識が遠のいていった。
その時、じわ…と股間に暖かい感触が広がっていった。
男はじっと僕を見つめていたが、流れ出す小便を避けるように
立ち上がった。
「あんた、名前は?」
「かっ、神田でしゅ」
「…旅館やってるとこか?」
「あい、あい」
男はなおも考えていたがやがて他の男達に目配せして言った。
続く