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次の日も休んで母と病院から帰って来ると、玄関に靴がたくさんあります。
居間から祖父や父、父の姉達の声がします。母は「邪魔になるから出かけようね」
とまた私を連れて車に乗りました。何でみんな来てるの?と聞くと一言だけ
「相談があるんだって」と言いました。

その夜父が母と私を呼び、「前の町に戻る」と言いました。何で?とは思いましたが、
いろいろ怖い目にあったこの家には住みたくありませんでした。今考えると無茶な
スケジュールで部屋探し、引越しとなりました。
引っ越す日、祖父が1人で引っ越しの様子を見ていました。私は何となくそばに行き
「おじいちゃん、また来るから」と言いました。すると祖父は優しく笑みを浮かべて
「もう来なくていい。心配するな。これでお前も大丈夫だ」と私の頭をなでました。
町に戻ってから水ぶくれはどんどんなくなっていきました。生活が落ち着いてきた
頃には、何もなかったかのように普通の肌になっていました。
女の人もあれから見ることはありませんでした。

その後は祖父の話もタブーみたいな雰囲気になり、会わないまま祖父は去年亡くなり
ました。畑で倒れていたそうです。
後に父の姉に聞きましたが、父は姉が3人いるのですが、父だけでなく3人とも祖父母に
育てられていないそうです。それぞれ親戚の家で育っています。
また祖母は亡くなったと思っていましたが、父が小学生になった頃に離婚し、実家に
戻りその後再婚しているそうです。

怖かったことだけは確かですが、訳がわからないことだらけでした。
あの女の人は?あの2階の音は?なぜ祖父は怪我をしたのか?日本人形はどうなった?
なぜ私にだけ水ぶくれができ、治ったのか?祖父が言った言葉の意味は?
祖父が亡くなった今となっては、もうわからないままです。

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