[凝視する婆あ]

15年ほど前の話。
当時高校生だったオレは深夜3時頃
原付で家路についていた。
雨がパラパラ降り出していたので、普段は通らない
近道を通ることにした。

その道は、かなり大きな公園の外周道路で、
道の両サイドが竹やぶになっている。
この竹やぶがまた広くて、周辺に民家は全く無い。
歩行者は公園内を通れるし、なにより薄気味
悪いので、その外周道路を人が歩いているのを
見たことが無かった(歩道もない)。

原付でその道に入っていく。
周りを竹やぶに囲まれているせいか、気温が
グッと下がるのを顔に当たる風で感じる。
歩行者どころか車すら走っていない。
相変わらず気味の悪い所だ…

200m程進み、左に大きくカーブした所にババアがいた。

道路の真ん中に立ち、無表情でこちらを向いている。
他に車も無い。オレとババアだけ。
「エッ??」
と思った瞬間、フラッと動き、原付の俺を
手で止めようとした。
間一髪ババアを避けて通り過ぎる。

「ボケーッ!!」

と叫びながら振り返ると、ババアはこっちを見て
立っている。オレは走りながら2つ3つ暴言を
付け加え、バックミラーで小さくなるババアを
見ていた。

『確実にボケてしまってるんだな。家族は何してんだよ。』
などと考えながら、その道を抜けていった。

2キロほど走ったところで信号に引っかかった。
ボーッと待っていると、後ろから車が近づき
オレの真横で止まる。タクシーだ。
なんとなく後部座席を見ると、さっきのババアが
オレをジーーッと見ている。その距離50cm。
顔には表情は無い。只々オレを凝視している。
さすがにビックリして目を逸らした。

『よくタクシーもあんな所でババアを乗せたな』
と考えていると、信号が青になりタクシーが走り出した。

オレもタクシーの後を走りだす。
するとババアがタクシーの座席から体を乗りあげて、
後ろの窓ガラスに顔を近づけオレをずーっと見ている・・・

『気持悪い!…運転手注意しろよ!』

その時違和感を感じてアクセルを緩めた。
何かがおかしい・・・・・・・・・
ふとタクシーの天井を見てみるとランプが光っている
・・・・・空車!?

全身に鳥肌が立つ・・・まさか・・・???
オレはブレーキをかけて止まった。タクシーは離れていく。
ババアは後部ガラスに内側からへばりついてオレを見ていた。

実体験である。
昔その外周道路でどうのこうのって後日談は無い。
そのババアも以降見ていない。

タクシーがメーターを下げ忘れていただけ…? ワカラン。

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