[恐怖郵便]
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「コンコン、コンコン!」
しかし意表をついて、
ポストではなく、ドアがノックされました。
「K○さ〜ん、郵便で〜す」
ドアの向こうからは、張りの無い無機質な男の声がしました。
「K○さ〜ん、郵便ですよ〜」
ノックと、声は続きます。
僕たちは声を潜めて様子を伺いました。

しばらく、ノックと声が続いた後、
ふっと、音が止みました。
そして、
「カッ、コッ、カッ、コッ・・・・」
足音が歩き出しました。
そしてそのまま、小さくなり消えていったのです。

ほっとして、僕らはその場にへたり込んでしまいました。
布団に潜っていたYさんも顔を出し、
安堵で泣きじゃくっていました。
「ふう・・・・」
僕は、ため息をつくと、
立ち上がりながら、なんとはなしに
目をドアの方へ向けました。

「・・・・・・!」
僕は、恥ずかしながら、腰を抜かしてしまいました。
僕のただならぬ様子に、JとYさんも
ドアの方を向きました。

ドアのポスト。
フタが上がり、ギラギラした2つの目がこちらを睨みつけていました。
『なんだ・・・・いるじゃないかよお』
先程とは打って変わって、
野太いしわがれ声が、部屋の中に向かって放たれました。

「ガンガンガン! ガンガンガン!」
激しく、ドアを殴りつける音!
「ガチャガチャ!」
ドアノブも、もげてしまいそうな勢いで、激しく上下しています。

同時に、部屋中の窓という窓が、
ガタガタと音を立てて震えだしました。

「キャーーーーーーーーーーー!」
Yさんは、悲鳴を上げると気を失ってしまいました。
僕とJは、Kさんの上に覆い被さったまま、
何もできずにいました。
どのくらいの時間が経ったでしょうか。
気が付くと、あたりは明るくなってきていました。
音も止んでいました。

「・・・・Yさん!」
僕とJは、慌ててYさんを確認しましたが、
Yさんは気を失っているだけで、命に別状はなさそうでした。


あれほどの騒ぎにも関わらず、
1階の大家さんも、
隣の部屋の住人も、
全く夜中のことは気付いていませんでした。


Yさんは、その後、そのアパートを引き払い、
別の場所に引っ越しました。
その後は何もないようです。

後日談ですが。
なぜ、変なモノがYさんの処にきたかというと。
おそらく、これが原因でないかと思うのですが・・・。

僕は知りませんでしたが、
僕らの高校では、変なおまじないが流行っていたようです。

場所は詳しく書けませんが、
ある場所にあるポストに、
夜中の2時49分に、
憎い相手の名前を書いて、
縁を黒く塗り、投函すると。
その相手に不幸が起こる・・・・と。

Yさんはそのまじないをやってしまったようです。
相手は、Yさんの好きな先輩の彼女・・・

僕は、あんな屈託のない、
明るいYさんがそんなことをしたのに驚きを隠せませんでした。
よく、このスレでも出てきますが・・・
「一番怖いのは人間の心だな」と。

みなさんも、お気をつけください。
人を呪わば穴二つということです。


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