[恐怖郵便]

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僕には、霊をどうこうする力なんてありません。
警察に行っても、まともに取り合ってもらえる内容でもないし、
警察でどうこうできる内容でもありません。
しかし、話しの流れから、なにもしなければ
Yさんは今夜、2時になにかしらの理由で
死んでしまいます。

「ちょっと、待ってて」
僕はJとYさんにそういうと、
喫茶店から外に出ました。
こんな時に頼りになるのは、一人しかいません。
携帯を取り出すと、僕は爺ちゃんに電話し、
今までのいきさつを話しました。

僕「・・・というわけなんだ、どうしよう、爺ちゃん!」

爺「ふ〜む、そりゃ、いかんわなあ」

爺ちゃんは、しばらく何か考えるように黙りこくったあと、

爺「あれじゃ、前に、大畔(おおぐろ)の坊主に書いてもらった、
  お札があるじゃろ。あれを、ポストと、
  ドアのノブ、部屋の窓という窓に貼るんじゃ。
  たぶん、そいつは、招かれ神の類じゃ。
  中から招かんかぎり、悪さはできんはずじゃ。」

僕「夜中、部屋に戻らないようにしてもダメ?」

爺「だめじゃな。外じゃ、余計にいかん。
  四角く封ずる門がないぶん、連れいかれ放題じゃ」

僕はJとYさんに、先にYさんの部屋に戻るように言い、
僕の家にお札を取りに戻りました

大畔の坊さんというのは、
「かんひも」の時に、僕とKを祓ってくれた坊さんです。

普段は、酒飲みで肉も食べるわ、嫁がいてバツイチだわ、
生臭さがプンプンする坊主ですが、
霊験はあらたかなようです。
僕が、変なモノを見るようになってから、
魔よけのお札を書いて送ってくれていました。

僕は、札を取ると、教えられたYさんのアパートへ向かいました。
時刻は夜の8時でした。
部屋に入ると、青ざめたYさんとKが待っていました。

僕は爺ちゃんに教えられてとおり、
部屋中の窓と、玄関のドアノブに、札を貼りました。
そして、落ち着かないまま、
3人で時間を待ちました。

緊張していたせいか、
時間がたつのはあっという間でした。
時計の針は、1時55分を指していました。

「・・・・!」
一番最初に異変気付いたのは、
Yさんでした。
「来た!!」
震えながらYさんは、
自分のベッドに潜り込みました。

「・・・・カッ、コッ、カッ、コッ・・・・」
足音です。
同時に、僕の背中に、冷たい電流が走りました。
ものすごく、嫌な感じがします。
「・・・・カッ、コッ、カッ」
足音が、部屋の前に止まりました。

そこで、僕は重大なことに気がつきました。
なんと、間抜けなことでしょう!
一番肝心な、ポストのフタに、札を貼ってありません!
かといって、今から貼る勇気はありません。

何かが投函されるのか、と、
僕とJはポストを凝視していました。
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