[恐怖郵便]

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朝、ようやく辺りが明るくなってくると、
Yさんはベッドから出て、郵便を確認しに行きました。
見ると、普通の官製はがきです。
恐る恐る拾い上げて、あて先を確認してみました。
「○山 ×夫 様」

Yさんはほっとしました。
あて先が自分宛でないことに、まずは安心したのです。
そして、手紙をひっくり返して文面の方を確認しました。
「・・・!」
Yさんは、心臓がすくみ上がるのを感じました。
はがきの縁が、1センチくらいの幅で、黒く縁取られていました。
そして、空白が大部分を占める中、
真中に無機質なパソコンの字で1行だけ、

「9月27日  19時31分  死亡」
とだけ記されていました。
Yさんは、誰かのたちの悪いいたずらだと思い、
そのはがきを捨ててしまいました。

そして、Yさんはそのままはがきのことなど忘れて、
普通に生活を送っていました。
9月の27日も、別段なにごともなく過ぎていきました。

●9月28日●
その日は休日で、Yさんは友達とファミレスで昼食を取っていました。
今度の休みの計画や、好きな歌手のライブの話しなど、
いつものように、話しは弾んで楽しいランチのひと時でした。

「・・・・!」
Yさんは、友達と話しながら、
見るとはなしに見ていたテレビの画面に、
信じられないものを見つけました。

「・・・・昨晩午後7時30分ごろ、
××市に住む・・・・・○山 ×夫さん、3○才が、
自宅で死んでいるのが発見されました・・・
死因は・・・・警察では事件と事故の・・・・ 」

それは、まさしくあのはがきに記入された名前でした。
Yさんは恐ろしくなり、慌てて家に帰りました。
はがきの名前を確認するためです。

家に着くなりYさんは、玄関の隅に置いておいた
ごみ袋の中を探してみました。
あのはがきが来てから、まだごみは出していないので、
この袋の中にあるはずなのに、
全く見当たりませんでした。
でも、あれは間違いなく、
あのはがきに書いてあった名前だったのです。

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「う〜ん・・・」
話しを聞き終わって、僕は思わずうなってしまいました。
「まあ、でも、その後はなんともないんでしょ?」
僕が口を開くと、
Jが首を振りました。

J「それだけじゃ、ないんだって。
 それから、もう4回・・・同じことがあったって・・・
 もう、5人、死んでるって・・・」

僕「でも、それだったら、変質者か、悪質ないたずらじゃないの?
  警察に行った方がいいんじゃない?
  へたしたら、殺人犯からとかってことも・・・」

僕とJが話すのを黙って聞いていたYさんが、

Y「違うの。
 だって、みんな、死に方が違うの。
 調べてみたけど、心臓麻痺の人や、交通事故の人、病気の人。
 殺されたとかじゃないし、みんな住んでるところがバラバラなの」

僕は途方に暮れてしまいました。
今まで、そんな例は見たことも聞いたこともありません。

J「それに、ゆっくりもしてられないんだ・・・」
Jはそういうと、Yさんに目配せをしました。
Yさんは、少しためらうと、バックから何かを取り出しました。

「・・・・!」
それを見た瞬間、僕の背中にひやっとした感覚が通りました。
いつもの、いやな感覚です。
今までそこのバックに入ってたのに、何故気が付かなかったのか、
というほどの、いやな感覚。

それは、縁を黒く塗られたはがきでした。
「10月26日 2時00分 死亡」
と書かれていました。
「まさか・・・」
僕が聞くと、Yさんは頷いて、はがきの宛名面を出しました。
「K○ Y子 様」
宛名には、Yさんの名前が書かれていました。
「このはがきだけは、消えないの・・・
 ほかのはがきはみんな、どこかに行っちゃうのに、
 このはがきだけはずっとあるの・・・」
Yさんは、震える声でそう言いました。

「いつ来たの!?」
僕は、そのはがきのいやな感覚に、
思わず声を荒げてしまいました。
Y「おとといの、夜・・・」
僕「なんで、もっと早く相談しなかったの!?
  こいつは、本物だよ!」
J「A!、A!ちょ、声が大きい」

僕の声に、周りがこちらに注目しているのが分かりました。
僕は、中年のおっさんみたいに、
机にあった手拭で、額を拭き、
(・・・落ち着け、落ち着け・・・)
深呼吸をすると、どうすべきか考えました。
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