[さびた槍]

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夕顔食いながらさ、ふと気になってたから聞いちゃったんだよね。
何か部屋が開くだの閉めるだのみたいなのをこの間話してたでしょ〜みたいな感じで。
そしたらまた空気が変わっちゃってさ、婆ちゃん泣き出す、オサーンはテンパる、
爺ちゃんは電話しだす、オヤジ&おかんはうなだれるみたいな感じにね。
俺らはさすがに怖くなって二人とも泣いちゃった。阿鼻叫喚とはまさにこの事。。。

で、オサーンに別の部屋に連れて行かれてね、盆棚がある部屋なんだけどさ
そこで10分くらい拝まされて、「今日は寝ろは…」って言われたんだけど、
気になって寝れない。まだ婆ちゃん泣いてるし、近所から人来るしさ
寝れるわけねーだろみたいな場だったんですよ。まぁ寝たんだがw


朝起きたら、いつも通りの朝で取り合えず一安心。けど、爺ちゃんは難しそうな顔を
したままだった。起きてソッコーで寺に連れて行かれて、剣舞(←字は合ってるか分からん)
を見せられた。ケンバイっていうのは何か背中に旗さして踊ってるよくわからんもの。
この地域では子ども会みたいなのに入ってるヤツらが踊ってるの。学校の帰りとかに
公民館みたいなところに寄って、夏に踊る為に練習してるんです。俺はやらんかった。
見せられた後に寺の本堂の中に連れて行かれて、坊さんに長々とお経をあげられた。
以降は爺ちゃんとオサーン、坊さんの会話ね。うる覚えだからあれだけどさ…。
あと方言が意味不明だと思うので訳して書きます。爺ちゃんをJ、オサーンをO、坊さんをBとします。

O:「何も見てなかったって言ってました」
B:「だとしたら安心だけど油断は出来ないな」
O:「こっちはこっちで何とか出来るとは思うんですが」
B:「じゃあ、T(本家の屋号)に行くから」
J:「お願いします」

みたいな感じ。もっと沢山話してたんだけど、こんな感じでした。

で、爺ちゃんが俺にね、話してきたの。
俺の言葉で話しちゃうから、この通りに話していた訳じゃないけどね。
内容的にはこんな感じでした。

「お前はこの家の造りはだいたいわかるだろ?部屋が何個ある?
その部屋で物置にしてる部屋があるだろ?その部屋の奥に襖があるだろ。
そこには昔から近づくなとは言われて多と思うけどな、そこの襖が
ちょっとだけ開いたんだ、最近。そこにはな、錆びた槍の先が
しまわれてるところなんだ。」

ってね。本家の部屋は8つくらいあって、縁側が2こある不思議なつくりなんだけどね、
俺が本当に小さい時から言われてたのが、裏の縁側に回るなってことと
物置の部屋には行くなって事。まぁ物置にしてる部屋なんて確かに暗がりで
薄気味悪いから行かなかったんだけどさ、そうやって言われてたの。
その奥に襖があるのはなんとなーくは知ってたんだけど、その前には
荷物やら何やらが山のように置かれてたから、行くにも行けないようになって
たんだよね。俺は薄気味悪いから物置部屋には近づきもしなかったし
そんな襖のことはどうでもいいと思ってた。今これ書きながら考えると
あの荷物群は絶対に意図的なものだったんだろうなって思う。
で、また爺ちゃんが

「その槍の先はな、爺ちゃんの爺ちゃんの(ry のな、ずっと昔から
あるもんなんだ。爺ちゃんもな、前からあれは近づいても見てもダメだって
お前くらいの時には言われてたんだけどな。近づくなって理由は定かではないけど
爺ちゃんが爺ちゃんから聞いた話だとな、あの槍は昔、ここで飢饉があった時に
あの槍でみんなどんどん死んでいったんだ。何であの槍で自殺したのかは
分からないけど、そうやって爺ちゃんは聞かされた。聞かされたのはお前より
もっと大人になってからのことだったんだけどな。実際はどうかは分からん。
その槍は昔からこの家が預かることになっていてな、お前もわかるだろ。

ここら辺で中心的な家がここだってことくらい。だから、その槍の先を預かってるんだ。
押入れの中にただ槍の先がコロンって転がってるだけなんだが、本当に危ないもの
なんだよ。襖にはおまじないがしてあって、開かないようになってるんだ。
もちろんこっちから開ける事は御祓い(?)の時以外は絶対にないからな。
お前も見たことあるだろ。坊さんがたまに来て物置部屋に入っていくの。
あれは御祓いをしていたんだよ。お前ら子供には見せちゃダメだって坊さんから
言われてたしな。お前も坊さんから爺ちゃんやオサーンから言われた通りなことを
そのまま言われたことあるだろ?物置部屋には近づくなって。
けど、いい子だったよ、お前は。ちゃんと近づかなかったしな。お前の父ちゃんは
悪がきだったから子供の頃近づいて襖付近まで行ってしまって、その後大変だったんだ。
とにかく、大変なものが入ってるんだよ。そっから先は婆ちゃんに聞け。」

のような事を言われて、何か気分がさすがに悪くなっちゃってね、婆ちゃんに聞く気にもなれずに
割と放心状態でした。ガキながらに流石にこれは怖かった。けど、婆ちゃんが聞きたくもないのに
こっちに来てさ、言うんだよね。また俺の言葉による内容のまとめになっちゃうけど…。

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