[トイレの個室]
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パンツ下ろしたり上げたりするところに萌え。
どんなパンツかさりげなく書いてくれるとなお良し。

個室の中はすごく薄暗かった。
後で考えたら、そんなに個室の中が薄暗いはずはないんだけど(照明ある
から)、でも、そんなことまで頭が回らなくなってた。
暗くて、すぐには何があるのか見えない。だけど、暗闇に目が慣れるように、
少しずつ何かが見えてきた。
仕切の壁のほうを向いて、何かがうずくまっていた。白いボロボロになった
着物のような衣服。カリ、カリ……って音をさせているのは、そこから突き出
された手だった。不思議と怖くなかった。だけど、そのまま後ずさって離れよ
うとして、ふと顔を上げたときに、瞳の端に何かが見えたのね。で、ふと、そ
の個室とは反対側の手前のトイレを見たとき、すさまじい形相の何かが、仕
切の上からにらんでいた。
生首。すざまじい形相の。心霊写真とかでよくあるみたいな、ぞわっと総毛が
立つような、生理的な恐怖を剥き出しにされるようなそんな顔。

一瞬しか見てない。
だけど、もんのすごく怖かった。
さっき見てたものには、首がなかった気がした。「本体はこっち」って、本能が伝
えてた。
全身ガクガク震えて、歯の根まで合わなくなって、頭の中で「ごめんなさいご
めんなさい!」って言ってた。
いちゃいけないところにいるような、そんな気分。
足はちゃんと動かなくて、そうっとそうっと、ゆっくりしかトイレから逃げ出せな
かった。腰が抜けたような感じで。その間、全身鳥肌が立ちまくり。生首から
の視線感じまくり。
悪夢の中にいるみたいに、トイレの入口までが遠かった。
外に出ると、とっぷり日が暮れてたんだよね。入ったときは夕日だった気がす
るのに。日が落ちるのは早いけど、それにしては早すぎる。時間を飛び越して
しまったような違和感があったことを覚えてる。

私はけっこうおしゃべりな方なんだけど、大学を卒業するまで、トイレでの話は
サークルの人にも誰にも言えなかったな。
のぞきの話も、自意識過剰みたいに思われるのが怖くて。
最初のは、確かにのぞきだったと思う。あののぞきのせいで、怖いものまで見
た!って思うと、今でも腹が立つ。
のぞきは、ひどい天罰を受ければいいと思う。
それからは、サークル棟のトイレには一切行かなかったので、ネタはありません。
他の人からも、トイレについての噂は聞いていない。
長々とすみませんでした。


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