[地下の世界]
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アパートに近づくと、後ろの方にも同じアパートが建ってるのが見えました。
アパートは4階建てで、鉄階段が外付けされてありました。
ざっと見た感じ、横8部屋×4階の32部屋で階段は4つありました。

アパートがいくつあるのか気になったので道の左端に寄ってみると。
はるか遠くの方まで同じアパートが連なってるのが見えました。

一つ目と2つ目のアパートを通り越し、3つ目のアパートまでたどり着き
2つ目の階段の4階左側の部屋がお姉さんの住まいでした。

そこまで来ると僕はもうしんどくて、ボインのことなどどうでもよくなり、
ただただ休みたいだけでした。

お姉さんはドアを開けて中に入ると「あんたらも入りー」と言ったので、
僕とK子は恐る恐る入りました。

お姉さんが「買い物袋はソファーの上において」と言ったので、
僕は「ああ重かったー」と言って、
そばにある大きなソファーの上に置きました。

中は暖かく玄関は結構広く、ソファーのほかには、
壁に靴箱が埋め込んであり、隣に帽子掛けのような物が置いてありました。
そこにプチのヒモを引っ掛けました。

お姉さんは「ちょっと着替えてくるから待っといて。
あんたらの着替えも持ってくるわ」と言うと、
長い廊下を奥の方に走って角を曲がってしまいました。

「着替え」と聞いてしまった僕がじっとしていられるわけがありません。

K子はソファーにもたれて買い物袋をつまんでくるくる回しながら、
「牛肉とトリ肉と・・・」などとブツブツ言ってます。
プチも顔を近づけてフンフン鼻を鳴らしています

僕はスっと立ち上がると、壁にかかってるよくわからない風景の絵を
見るふりをしながら、早足で奥に向かおうとしたらフッと左手の方から
寒気を感じました。

見ると窓付きのボロ目のドアがありそこから冷たい空気が
漏れ出しているようなのです。


ドアの上には長めのかまぼこ板のような物が打ち付けてあって
汚い字で「しょうちゃんのへや」と書いてありました。

まわりの壁はつやつやの木製でお洒落な雰囲気なので、
そのドアの存在が不自然に思いました。

気になった僕は窓に顔を近づけ中をのぞいて見ました。
中は薄暗くて窓ガラスが汚いせいではっきりとは見えませんでしたが
何人かの人らしき物がうずくまっているようなのが見えました。

僕が「K子ちょっと来てみい」と言うと
K子は「どうしたん?」と言ってからドアに気づき、窓に顔をへばりつけました。

僕が「誰かいるみたいやねん」と言ってドアをコンコンと叩くと、
K子が「わっ!」と言って飛びのきましたした。

見るといつの間にかドアの向こうに僕と同じくらいの背の高さの男の子が
無表情で立っているのです。


僕とK子がしげしげと見ていると、そいつが指で何かをつまんでクリッと回す
ジェスチャーを始めたので、
僕が「開けて欲しいんかな?」と言うと、K子が「開けてみようか?」と言ったので、
僕はドアの鍵を開けました。

するとドアがキキーっと開き、中から目を細めた男の子が出てきました。
その男の子は半ズボンをはいていて、上は(元は白かったと思われる)
茶色がかった汚らしい半そでのシャツを
着ていました。手足や顔には血の気がなく不気味なたたずまいでした。

その男の子は何も喋らず、僕とK子もどうしたらいいかわからなかったので黙ってると、
男の子はこちらを向いたまま後ろ手で鍵を閉めました。
僕が「えっと…まだ中に人いるんとちゃうの?」と言うと

男の子はニヤーっとゾッとするような笑みを浮かべました。
するとプチが背後から「グルルー」と恐ろしげなうなり声を上げました。
僕は何かとんでもなくヤバイことをしたような気がして
心臓がドキドキしました。

しばらくすると廊下の奥からパタパタと足音がして
お姉さんが「ハイ着替え持って来たでー」と言いながら現れました。
戻ってきたお姉さんはピンクの可愛いパジャマに着替えていて、
ギョッとした表情で周囲を見渡すと「ちょっとお!!出したんッ!?」と
叫ぶように言いました。

それに反応して男の子がお姉さんの方に振り向くと、
お姉さんは「イヤーッ!!」と言って僕とK子の為に持ってきてくれた
着替えのパジャマみたいなのを男の子の顔に投げつけると、
背を向けて逃げ出しました。男の子もそれを追うようにして廊下の奥に消えました。

奥からはガラスが割れる音や物が落ちる音がして何やら激しく争っている様子でした

呆気にとられていた僕とK子ですが、
僕はこうしちゃいられねえ!お姉さんを助けるという聖的行為の
ドサクサにまぎれて、おっぱいを揉みしだいてやるぜ!
というすばらしい作戦を思いつきました。

(姐さん今行くぜ!!)と心の中で叫び、奥に向かってダッシュしようとすると、
廊下の角の方から何かが飛んできて、壁にゴンと当たって落ちました。
一瞬勢いを失った僕が、「なんじゃらほい?」と近寄ろうとすると、

K子が僕のシャツの袖口をギュッとつかんで怯えたような口調で
「クビ・・・クビ・・・」とつぶやきました。

続く