◎UFOの基地か?
もう一つの奇怪な現象に、はっとしました。ガスを通して見える五百米
ぐらいの先の小高い山の中腹が、がらん洞の洞窟らしい穴になってい
て、その穴に向かって風が吹いているのです。附近の気体の流れが、
その穴に対して集中しているみたいでした。つまり、直径一粁もありそう
な得体の知れない砂地の真上を、穴を中心点とした場所へ、四方八方
かたのかなり強い風が吹いているようだったのです。
木や葉は全く生えていません。緑のガスが一面にただよっている外に、
近づいて分ったのですが、小高い山と覚しい露出している山肌は緑色の
泡で包まれていたのを発見しました。しゃぼん玉遊びをするときや石鹸
から出る泡と同じような泡ですが、なぜか緑色の小粒の泡です。かなり
強い風があるのに、地面に着いて離れないでいるのです。どこから何の
ためにと、私の頭は狂いそうになってしまいました。地球上の動植物で、
こんな泡を出すものは聞いたことがありませんし、気象学の方面でも見
聞きしていません。
大洞窟に近づいた私が、右手で地面に吸いついている泡を握った時に、
納豆のような粘っこいものがからんで消えずに残り、手の平は真赤にな
りました。緑から朱に変わったことと、熱い感じだったのを記憶しています。
この小区域だけは地球上にありながら、別の未知の天体のようになって
いるらしいことと、緑色に光っている泡自体が、確かに生きているのを確
認したように思われたことです。
大洞窟に吸い込まれるように入った私達は、がらんどうではなくて、雑
多なものが天井や岩肌にぺたぺたと張り付けられているのに気付き、何
故か鉄片を吸いつける磁石のような働きをする内部の岩壁に驚きました。
二十米もあろう高い天井に、にぶく光る物体を見つけ、取ろうとしてジャン
プしました。ここは引力が極端に弱くなっているせいか、私でさえも楽に
とび上がれるのです。緩慢な動作でしたが、身体がふあーっと空中に躍
り、難なく届きました。
縦横十糎(センチ)のも足りない銅合金の板でしたが手にして読むと、
確かに「金星発動機五二型昭和十九年製三菱航空機株式会社」と刻み
込まれていた記憶があります。後になってから、旧海軍に在籍したこと
のある方にたずねますと、中型の陸上攻撃機とか称する飛行機用エン
ジンの名称板だと教えてくれました。そうしますと、戦争中にこの附近で
不明になった海軍機のものになります
。
続く