[山登り]
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反り返りの部分の最後に手をかけ、宙ぶらりんになりましたが、後は体を引き起こすだけ
なので、そこを両手で持った瞬間に下の友達に「登ったぞ」と言いたげに、
下を振り返りました。しかし残念ながら登り切ったところはシートが邪魔で彼からは見えず、
ただ無言でロープが送られてくるだけだったのでした。
ちょっとがっかりしてまた上をむき直して上まで行き、頂上の支点の部分をタッチした後、
「降りるぞー」と叫び、ロープにテンションをかけて下まで降りて行きました。
さっき見かけた人は、上に行ったときすでにいなくなってしまいましたが、
雨音で足音なんて全く聞こえないし、「通りがかり」ということで、その時は僕は
気にもせず、友達にネタをふったりもしませんでした。

それから何回もルートを変えたり、シートの下で休んだりして随分やっていたんですが、
6時くらいだったか、なんだか暗くなり始めたということに気づき、「もうあがるか」
ということになりました。とりあえず僕が下でシートを片づけたりしながら
相方が上に裏から登って頂上の支点をはずしにいくことになりました。
裏へは岩の脇から登ればよかったのですが、雨のために露出した土と岩肌が
とても滑りやすく、僕は面倒だったので相方に行ってもらったのです。
彼はそういう所を登るのが得意だったので普通に引き受けてくれ、僕は早々にシートを
かたづけ、タバコ吸って一息ついていました。時々ぼたっとタバコの上に落ちてくる
雨の滴を見ながら、それでも1分くらいの短い時間でしたか、暇をつぶしていました。
急にふと最初に登ったルートが気になり、もう一度登り方をみようと上を見上げて
考始めました。登り方はほぼ限定されているのですが、やはり登り方のコツみたいのがある
のでしょう、考えるほど煮詰まっていきます。

続く