[元彼女の生霊]
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「一人でだよ。」もう一度言いました。僕も笑顔を作りました。
今度は彼女はなにも言いません。笑顔で立っているだけ。
レジが僕の番になりました。彼女から視線をそらすきっかけができてホッとしました。
支払いをし、コンビニから出る前に店内を振り向きました。
先ほどと同じ場所にSが立っていました。笑顔でこちらを見ています。
「じゃ、元気でな。」
それだけ言うと僕は彼女の返事も聞かず、コンビニを出ました。

その夜は霊能力者のAに教わったとおりにして寝ました。

次の日、仕事が終わった僕は恋人と会うことにしました。
2ヶ月くらい前から付き合っている女性がいたのです。
彼女(C)は一人暮らしをしていたので、彼女の部屋に泊まろうと思ったのです。
一人で寝るのが恐かったのでしょう。
彼女の携帯電話に連絡し、Cを訪ねると部屋からは料理の匂いがしていました。
そして僕を出迎えたCは、この前、彼女の誕生日に僕がプレゼントしたプラチナの指輪を
していました。
Cの手料理を食べ、楽しくおしゃべりをしていると、余計にSのコトがチラチラと頭に浮かび
ましたが、彼女にはそのことは話せませんでした。
食事が終わり、キッチンでCが食器を洗っている間、僕はTVを観ていました。
すると突然、キッチンからCの「キャッ!」という短い悲鳴が聞こえたのです。
「どうした?」
ゴキブリか鼠でも出たか?と思い、Cのそばへ行ってみると、彼女は手のひらに乗っている
金属を僕に見せました。
僕が彼女にあげたプラチナの指輪でした。それが握り潰したようにひしゃげています。
「洗い物をするとき、大事な指輪に傷が付いちゃいけないと思って…。」
彼女はキッチンの横にある洗濯機を指さしました。
洗濯機の上にタオルがあり、その上に指輪を置いて食器を片づけていたようです。
「洗い物が終わって指輪を見たら、こんなになってたの。どうしてなんだろ?せっかく
くれたのにゴメンなさい…。」
Cが壊したのではないことはすぐに判りました。
Cの力では到底こんな風に変形させることはできないでしょう

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