[壁のシミ]

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「そちらの宿に、今晩2人用の部屋はまだ空いていますか?」
「えー、申し訳ございませんが、只今満室でして・・・・」
「そうですか、分かりました。」
「あ、少々お待ち下さい・・・(数十秒後)午後7時以降でしたら、一部屋ご用意する事ができますが、
いかがなさいますか?」
この電話をかけているのは午後3時頃、まだその時間までかなり余っていましたが、
ここを逃せばもう他はないと思い、藁にもすがる思いで予約をお願いしました。
その後、あまり雪の強く降っていない所を選び、約束の時間になるまで適当に時間を潰しました。

午後7時前、到着したその宿は、観光ホテルとビジネスホテルを足して2で割ったような感じのところで、
恋人同士の初旅行にはお世辞にも向く所ではありませんでしたが、そんなわがままは言っていられません。
ギリギリで見つかったその宿でチェックインをしようとした所、まだ部屋の準備が終わっていないとの事で、
私達は「7時でも遅いくらいなのにまだ準備出来てないんだねー」
と身の程知らない愚痴をこぼしながら20分程待ちました。
案内された部屋に荷物を置き、その夜一晩お世話になるこの部屋を
物珍し気に見回っていましたが、ふと気がついた事がありました。

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