[天井裏から]
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友人は、すぐにでもあの部屋を出たいといった。そりゃそうだろう、でも金が無い。
気の毒だとは思うが、オレも生憎と金を貸せるほど余裕は無かった。
そう言うと「いや、金は自分で稼ぐ。頼みたいのはソレじゃない」と言う。

話を聞くと、夜家に居たくないのでコンビニの深夜勤務のバイトをはじめることにしたそうだ、
「昼間だけだったら我慢できると思ってたんだが・・・」
どうもだんだん酷くなってるようで、あの部屋に居るといつ出てきてもおかしくない気がして恐ろしい、
眠れない、そこで昼間だけでいいから俺のうちで寝させてほしい。ということだった。
もちろんオレも一人暮らしだし、昼間は大体家を空けるから何の不都合も無い、
しかもあんな体験をした後だ、二つ返事でオッケーした。
「でもさ、まだ入居して1週間だろ?不動産屋に文句言えば別の部屋探してくれたり、
 全額じゃなくっても少しくらい金戻ってくるんじゃねえか?」と言ってみた。
あれだけ強烈にはっきりと、得体の知れないものがお出ましになっているのだ、
確実にあの部屋で何か事故が起こっているはずだ、
そういうのは新しい入居者には告知しとかなきゃいけないと言うような話を聞いたことがあるからだ。

「3日前に不動産屋には言った、大家のところにも行ってみた」
あの部屋で誰かが死んだとか何か事故が起こったことは今まで一度も無い、
変な事を言って来たのも友人が始めてだ、とかなり不審がられたそうだ。
「出てくのはかまわないが、契約書にも有るとおり、
 退去の1ヶ月前までには出て行くことを伝えないといけない決まりだから、
 来月の分の家賃は払ってもらうときっぱり言われた」と、忌々しそうに友人は答えた。
何かを隠しているようにも見えなかったと言う。

「それに、もし何かあったとしても、知りたいとは思わない」と友人は言った。
それはなんとなく解る気がする、実際のところあそこで何があったのか突き止めようとか、
坊さんとか霊能者みたいな奴を呼んで御払いをしてもらおうとか言う考えは露ほども起きなかった。
とにかくかかわり合いになりたくない、できるだけ早く縁を切って、記憶からも消去してしまいたい
きっとそういう気持ちなんだろう。気持ちは良くわかる。
そして実際アレはそんくらいヤバイものだ、それは確実だ。

それから友人は働きまくり、2ヶ月ほどで30万近くためた。
昼間俺のうちで寝る以外はずっとバイトをしていた。

その間、あの部屋に服なんかを取りに戻ったとき(当然昼間)、
家にあった食器が、すべて粉々になっていたのを発見したり、
大家から電話がかかってきて、 “夜中に” わめいたり暴れたりするのをやめろと言われたりしたみたいだが、
あまり気にしないように勤め、黙々と働き続けた。(事情を知ってるオレにだけは、報告みたいな感じで教えてくれた)
当然かなりやつれたが、金が貯まったときはほんとにうれしそうだった。

引越しの日、当然今度も俺が手伝うことになった。
今回は確実に、日の光のあるうちに引越しを済まさなければいけない、
もう一人に声をかけ手伝ってもらうことにし、(友人Bとでも呼んでおこうか、こいつはその部屋の話は何も知らない)
前以上に段取り良く、要領良くすすめ、昼過ぎにはほぼ終わらせることができた。

引越し先の家から、件の部屋に戻り、不動産屋と大家の立会いの時間まで部屋を掃除していた、
1Kの部屋に3人がかりだったので掃除はすぐに終わった。

 ここでオレに魔が差した。
 
2ヶ月が経ちあの恐怖が薄れていたのだろうか、3人居るから気が大きくなったのか、それとも明るい太陽のせいか。
お札だの、不自然な髪の毛の束だの、血の染みだの・・・原因となったものが何か無いか探してみようと思ってしまったのだ。
友人もしぶしぶ付き合ってくれた。
引越しの住んだガランとした1K、探すような場所はそう多くない。

続く