[赤い靴]
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俺は何か気掛かりになって、8のボタンを押した。5階のエレベーターホールまで降りて確かめようと思ったのだ。
俺はKに『先に上行って待ってて』と言い、8階で降りた。8階のエレベーターホールには何も無く、俺はそこから7、6…と階段で降りていった。
そして5階。見渡してもあの赤い靴はなかった。さっきのは何だったんだろう…と思いながら、5階からエレベーターを呼んだ。
片方のエレベーターは『14』を表示していて、『あぁ、Kはもう着いたんだな』と思い、急いで向かおうとした。
そしてエレベーターが5階に着き、ドアが開いた。俺は一瞬『うわ!』と声をあげてしまった。
あの真っ赤な靴が揃えて置いてあったのだ。全体が奇妙に赤く、テカテカと光っている。人は乗ってない。
俺は何か、そのエレベーターで上に上がるのが怖くなった。しかし上ではKが待っている。俺は仕方なく階段で駆け足で
15階まで上る事にした。何か俺は焦っていた。早くKに会いたい、という妙な孤独感に襲われていた。

そして15階に着いた。…しかし、15階のどこを探してもKはいない。もしかして俺が遅すぎるのに腹を立てて先に下に降りたのか。
俺は寂しくなり、Kの名前を大声で叫んだ。『K〜!どこだ〜!』マンション中に俺の声がこだまする。
近くにいるなら聞こえるはずだ。…しかし返事が無い。もっと下にいるのか。はたまた声が聞こえていながら無視しているのか。
俺の精神状態はだんだんおかしくなっていった。不気味な光景をたて続けに見た恐怖感。それをKに伝えられないで一人で彷徨う孤独感。
…俺は一刻も早くKに会いたい、このマンションから抜け出したいと思い、15階から1階までエレベーターで降り、マンションの外でKを待つ事にした。
14階に降りてエレベーターを呼び、乗る。今度は赤い靴は無く、何かホッとした。そして1のボタンを押し、早く着いてくれと思いながら目をつぶり待っていた。
俺は怖くて仕方なかった。目をつぶりながら、かがみ、エレベーターの向こうを見ようとしなかった。
そしてエレベーターが止まった。ドアが開いたが俺は怖さで顔を上げようとしなかった。すると大人の男の声がした。
『子供一人発見しました。小学生のようです』
『え…?』
顔を上げると警察官が2人、俺を見下ろしていた。1人は無線で会話していた。そしてもう1人が俺に話しかけてきた。
『どうした?何でこんな所にいるんだ?』
俺は訳がわからなかったが、安堵感からその警察官に思い切り抱きつき号泣した。
そして俺はその場で警察官に色々聞かれた。そこで『他にもKと一緒にいた』と言ったら、その警察官の顔が一気に青ざめたようだった。


後で、Kは15階から飛び降りて即死したと聞いた。警察官はその件で住民から通報を受けこのマンションに来たらしい。
何故飛び降りたかは不明。防犯カメラには俺とKの姿しか無く、俺は警察から色々尋問みたいなのをされたが、結局この一件は事故として済まされた。

ただ、俺は確かに見た。
奇妙に揃えて置いてあった赤い靴を、3回も。


もう大分昔の話で忘れかけていたのだが、この前の仙台での報道を見て思い出してしまった。
あの報道にしろこれにしろ、本当にただの事故だったのだろうか。


次の話

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