[404号室]
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それから仕事も手につかなくなった。なんとか奴に一泡吹かせてやろうと、色々考えたが
どうしても用事が思いつかない。
「君、最近ふわふわしているがどうかしたのかね。」所長に声をかけられた。
「あ、実は」
と今までの経緯をすべて話すと。
「ふうむ、君それはいけないよ。お客様のプライバシーに踏み込むようなことはしちゃ
いけないなあ。」
「でも、奴は住んでるんですよ。404号室に。」
「確かに不思議だが。しかし家賃はしっかり払ってくれている。管理会社としてそれ以上
なにを望むんだね。」
「妙だと思いませんか。」
「思わんね。」
「何故」
「金は払ってくれているからだ。」
埒があかない。
「お客様に迷惑をかけたりするようなことがあれば、君の査定にも影響してくるぞ。さあ、くだらない
ことに迷わされていないで、しっかり働くんだ。」
くだらない?くだらないことか?所長も管理人も他の住人もどうかしてる。

しかし、遂に私の疑問も解ける時が来た。一ヵ月後のことだ、
「ああ、君。こないだの404号室の方が退去されるそうだ。明渡しに立ち会ってくれ。」
やった。とうとう用事が出来た。これはケチのつけようがない立派な用事だ。
退去する時とは残念だが、必ずタネを暴いてやる。
「くれぐれも失礼なことはするなよ。」

404号室のベルを鳴らす。
「やあ、入らせてもらうよ。」
ドアが開くや否や足を踏み出す。よし!。今度ははじかれることもなくすんなりと部屋にはいれた。
こんなにあっさり入れるとちょっと拍子抜けするほどだ。
「はやく確認をすませてくれないか・・・」
黒ずくめのゴキブリがなんか言ってるが知ったことか。私はとうとう入れた部屋の中をじっくりと
確認した。何かおかしなことはないか、どこか妙なところはないかと必死に探した。しかし小一時間も
探したが何一つ妙なところはない。ごく普通の部屋だ。私はすっかり困り果ててしまった。
「参った。降参だよ。いったいどうやったのか本当に知りたいんだ。教えてくれないか。」
「なんことだ・・・」
「この部屋だよ。どうやって一部屋余分に繰り出したんだ。」
「私は何もしていない。契約だから部屋が出来た。契約終了と同時に部屋は消える・・・・。
 もう確認は済んだだろう。私は帰らせてもらうが、あんたはどうするんだ。」
すっとぼけやがって。何が契約だよ。うまいこといいやがってきっと何か秘密道具でも
しかけてあるんだろう。何がなんでも探してやる。
「ああーーいいとも。確認は終わったよ。きれいなもんだ。」
「一緒に帰らないか・・・」
こんな薄気味の悪い奴と並んで歩くのなんてまっぴらだ。
「クク・・では、お先に・・・」
そういうと奴は部屋を出て行った。

続く