[404号室]
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「所長、おかしいですよ。どう考えても。変な犯罪に巻き込まれたらどうするんです。」
「変でも変でなくてもいいんだ。金を払ってくれるんだから別にいいじゃないか。
 無い部屋を借りようなんてよく分からんが、まあ世の中にはいろんな人がいてもいいだろう。」
「でも引越しとかいってましたよ。どっかの部屋に無理やり住み込まれたらどうするんです。」
「そうしたら追い出すだけさ。貸したのはあくまでも404号室だ。404号室ならいいが、
 それ以外はだめだ。」
それから、一週間後。
退去者がでるので、件の貸しビルへ明渡と現状の確認に訪れた。一週間前のことを思い出して
4階の様子もみてみようと思ってエレベータで4階に行くと・・そこには404号室があった。
大方、例の奴がどこかの部屋に無理やり住み着いて、部屋のプレートを書き換えてるんだろう。
所長め、やっぱり厄介なことになったじゃないか。

ベルを鳴らすと真っ黒の奴が部屋の中から現れた。
「ああ、この間の方か・・・、何か用かな?」
「おい、あんた何をやってるんだ。借りるのは404号室をと言う契約のはずだぞ。」
「見ての通り。404号室だが。何かおかしなことでも?」
すっとぼけてやがる。
「ふざけるなよ。そういうことをすると警察の厄介になるぞ。早く荷物をまとめてでていけ。」
「残念ながら、君の考えているようなことはしていない。よく確認して見たまえ。」
私は4階の部屋の数を数えた。見取り図では401から405まである。そのうち404号室は
存在していないわけだから4部屋あるわけだ。部屋が4つだからドアも4つ。単純な計算だ。
しかし、ドアはなぜだか5つあった。
「そういうわけだから、お引取り願おうか・・・」
奴にバタンとドアを閉められたが、こっちはどうしても納得がいかない。
やけになって他の全ての部屋にあたってみることにした。

401号室の住人
「え、404号室はなかったんじゃなかっったって?んーーそういえばそんな気もするけど
 今あるってことは最初からあったんだろう。」
402号室の住人
「404号室ですか。確かに最初はありませんでしたよ。いつのまにか出来て人がすんで
 るみたいですね。ちょっと変だけどまあ、特にこっちに迷惑がかかるわけでもないし・・・」
403号室の住人
「お隣さん?引越しの時に挨拶したけど別に普通だったよ。」
405号室の住人 
「隣の方ですか?黒ずくめでかっこいいですよねえ。俳優さんかな」
どういうことだ。他の階に行ってみると全てドアは4つだ。4階だけ5つあるってことは
404号室の分だけどっかから沸いて出てきたってことになるじゃあないか。管理人にも聞いてみよう。

管理人
「404号室に引っ越すって言ってきたときはなんかの間違いだと思ったけど。あの人と一緒に
 4階に行ったら本当にあったねえ。びっくりしたけど、世の中はいろいろあるからねえ。
 書類もきっちりしているし、オーナーも承知だし何の問題もないだろう。」
「何か変わったことはないですか?」
「お客さんが多い人みたいだよ。妙にのっぺりした顔の人が多いね。前に仕事を尋ねたときが
 あるけど、相談所なんかをしてるみたいだよ。お国の人の悩みを聞いてあげてるそうだよ。」
隣の部屋のやつらも管理人ももっと不思議がれよ。都会人が他人に無関心というのは本当らしい。

もう一度4階に行ってみようと思い、奴の部屋のベルを再び鳴らす。
「また、あなたですか・・・いい加減にしていただきたいな。」
「ちょっと、部屋の中を見せてくれないか。」
「断る・・・私は金を払ってこの部屋を借りている。あなたに勝手に入る権利はない・・・。」
その通りだ。しかし、どうしても我慢できない。無理やり中をみてやろうと奴を押しのけるよ
うに部屋に入ろうとした。そのときゴツンと何も無い空間に手ごたえが合った。
なんだこれは。何も無いのにまるで防弾ガラスでもあるようだ。
「部屋は用も無いものが入ることを許さない・・・。」
「私は管理会社のものだぞ。」
「だからと言って無断に立ち入る権利はない。・・・」
くそっ。その通りだ。奴と問答していると、エレベータが開いて人の声がした。
「お、ここだここだ。え-404号室か。あ、こんにちはー、ご注文のものを届にきました。」
「待っていた・・・。この部屋だ。運び込んでくれ。」
「はい、わかりました。」
そういうと業者は私がはじかれた空間を何の抵抗も受けずに通り抜け部屋に入っていった。
「おい、どうしてあいつは入れるんだ。」
「彼は荷物を届けるのが仕事であり、ゆえに部屋に入らなければならないからだ・・・。」
筋は通っている。なんとか私も用事を考えようとしたが、駄目だ。何も思いつかない。
この場は引き下がるが、絶対に部屋の中をみてやる。どんな手品かしれないがタネは絶対に
あるはずだ。そのからくりを暴いてやる。

続く