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[和解]

今夜はマサさん、キムさんの出てこない話を書きたいと思う。

この話は「傷」と「邪教」の間の話です。
この事件が切っ掛けとなって、俺はアリサと知り合う事となった。

マサさんの所から帰ってきて暫く、俺は職を失って難儀していた。
俺は「後遺症」に悩まされていて、昼間の仕事が出来ないでいた。
「修行」の結果、毎夜、「霊現象」に悩まされて眠ることが出来なかったのだ。
目を覚まして、呼吸を整えて、気を張り巡らせれば簡単に跳ね除けられる。
しかし、一旦ウトウトし出すとあちこちから湧き出してきた「魍魎」が俺の体に纏わり着き体を齧るのだ。
嫌悪感・不快感だけで実害はない。
だが、皮膚の上や下を這い回る蟻走感に全身が覆われるのだ。
想像してもらいたい。
実害がないからと言って、毎夜大量のムカデやゴキブリに素肌を這い回られる事に耐えられるだろうか?
さらに、睡魔に負けて眠ってしまうと最悪だ。
非常に生々しい夢の中で、「痛み」と共に蟲どもに身を喰われるのだ。
食い尽くされるまで目を覚ます事は出来ない。
そして、冷たい汗にびっしょりと濡れて目覚めた時、時計の針は1時間ほどしか進んでいないのだ。
朝、日の出の光を見ると、緊張の糸がぷっつりと切れて、死んだように眠りに落ちる・・・そんな日々が続いていた。

そんな訳で、俺は昼間眠り、深夜のアルバイトで食い繋いでいた。
しかし、俺の周りでは事故が多発した。
工事現場の警備員をやっていた時には、工事区間の反対側で棒を振っていた同僚の所に暴走車が突っ込んだ。
運送会社で働いた時には、ステージから落下した荷物に潰されて同僚が圧死した。
始めは偶然と思ったが、あるとき、倉庫で働いていた同僚に黒い影が纏わり着いているのを見た。
俺の部屋に湧き出してくるのと同じ「魍魎」だ。
その同僚は、未熟なフォークリフト運転手が崩した荷物に潰され、片足を複雑骨折する重傷を負った。
その時俺は悟った。
俺の周りで起きる事故、それは俺に集ってくる「魍魎」によって引き起こされていたのだ。
これが修行に入る前にマサさんが警告した「一生、霊現象の類から逃れられない体質になる」ということか・・・
俺は絶望で目の前が真っ暗になっていった。

そんな時、俺の元に繋ぎ役のシンさんから連絡があった。
シンさんの紹介の仕事をしないかと言う事だった。
俺は、もう、あの事件の関係者とは接触したくはなかった。
郷里を離れたのもそのためだ。
しかし、このままでは埒が明かない。
俺はシンさんの申し入れを受ける事にした。

シンさんが俺にコンタクトしてきたのは、共にマサさんの元で修行した友人Pの差し金だった。
Pの母親は俺達が戻って暫くして亡くなった。
重度の鬱病であったPの母親は、Pが自宅に戻ってからというもの、日を追う毎に衰弱していった。
そして、Pも見たのだ。
自分に纏わり着いているのと同じ魍魎が、オモニに纏わり着いているのを。
胃癌を患っている父親も長くはあるまい。
俺が戻ってくれば更に沢山の魍魎を引き寄せるだろう。
Pは1日でも長く父親に生きていて欲しかった。
幼い頃から家族ぐるみの付き合いをしており、俺にとってもPの父親は「もう一人の親父」と言える存在だった。
俺が郷里に戻れば、俺に引き寄せられた魍魎がPのアボジの命を削るだろう。
今は無事な俺の家族にも魍魎を取り付かせて不幸が及ぶかもしれない。
俺は二度と郷里には戻るまいと心に決め、シンさんの仕事を始めた。

シンさんの仕事は要するにボディーガードだった。
水商売の女や風俗嬢は、想像以上にストーカー被害を受けやすい職種らしい。
借金の取立てや引き抜きの男・店の女を食い物にしているホストなどをシメたりもしたが、殆どがストーカーからのガードだった。

続く