[ガラス戸の向こう]
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その日は仕方なく駅前のカプセルホテルに泊まることにした。
翌日会社に向かい、アパートを借りた担当にそれとなく聞いてみた。
担当は駅からも近いし、部屋数の割に値段が安かったから、理由は
それだけらしい。
俺は担当の前で大きくため息をつきながら「そうですか。」それしか
言えなかった。変なのが出るんで部屋を代えてくれなどとは言えない。
言ったところで誰も信じないだろうし。

この事件に遭うまで自分は、色々な現象を体験して怖いと心底思った
事はなかった。でも今回は心底恐ろしかった。
一人ではとてもあの部屋に戻ることはできない、そう思い俺は
中学からの親友の二人に連絡をとり相談に乗ってもらう事にした。

仕事が終わってから喫茶店で落ち合うことにして、俺は喫茶店で
二人を待っていると先にBがきた。Bは俺と同じで多少の霊感のある
奴だった。しばらくしてAがきた。AはBとは違い心霊現象とは無縁で
筋金入りの否定派で、科学で証明できない物は起こるはずがないと
いつも俺達のことを否定する奴だった。

俺は二人に昨日起こった事を一部始終話した。反応はおれの予想どうり
Aはアホかっの一言、Bは神妙な顔でお前がそこまで怖がるのは
初めてだな、そう言い終わるとBは「わかった今日一緒に行って調べて
みるか」Bの言葉を聞いてAは、俺のほうは行けるとしても明日からだな
今日はこの後、彼女んとこ行かなきゃ行けないからさ、俺とBは了解した。

それから30分ほど話してからAは出ていき、俺とBも喫茶店をでて
アパートに向かうことにした。
そして問題のアパートに到着し、玄関の前に立った途端Bは一言
「こんなの初めてだよ」すでにBの顔からは汗が吹き出していた。
俺は鍵穴に鍵をさしながらBに「開けるよいいか」Bは俺を見て
うなずいた。昨日と同じように線香の強烈な臭いが鼻をついてくる。
Bもすごい臭いだなといいながら、部屋に上がった。
昨日の事もあり二人とも土足だった。

俺とBは台所を抜けてすぐに6畳間に向かった。
6畳間に入るとBは、「お前の言うとうり台所普通じゃないね」と俺のほうを
見ながら呟いた。部屋に入るまでの道すがら俺とBはどういう対処法で
いくか相談していた。所詮素人に出来る対処法などたいした事はなく
前の部屋で使用していたお札をガラス戸にはり、清めの塩を台所の4角に
盛ることにした。

二人で怖々と台所に塩を盛り、奥の6畳間に戻りため息混じりにBは
「効けばいいけどな」そう呟いた。俺としても効いてくれればいう事はない。
昨日得体の知れない奴がでたのが11時すぎ、また同じ時間に奴は
現れるのか、そう思いながら時計を見るとまだ9時10分すぎ。
その時自分の中ではまだ何も起こらないだろうと思い、Bと雑談を
しながら気を紛らわせようとした。
続く