[女友達の話]

怖いと言うか気持ち悪い話
細かい会話とかは覚えてないので適当だが……

俺の中学時代からの女友達の話。仮に佳織としておく。
もともと小学校も同じで、五年、六年と同じクラスだったが、話すことなんてなかった。もともと一人でいることのほうが多い子だったと思う。
中学に進んで、同じ小学校から来た奴で同じクラスになったのが佳織ともう一人しかいなくて、席も近かったことから話し掛けたことが、佳織と友人になるきっかけだった。
そのうちもう一人の同じ小学校から来た奴(仮に順一とする)ともよく話すようになり、俺と佳織と順一は三人グループっぽくなった。
佳織と仲良くなってしばらくして、自分の家のこととか話題にしたら、佳織も自分の家のことを話した。
佳織は母方が中部のどこぞの田舎の神社の宮司の家系で、父方は北日本のある地方の豪農(今はわりと落ちぶれているらしい)の出身。この一族も、行者とかになる人が多かったらしい。
「なんかすげえな。じゃあお前、見えたりするの? 霊とかw」
「見えるよ」
「(……まじかよ)……どんなの見えるの?」
「ふざけて言うことじゃないし……」
佳織はそれ以上話してくれなかった。いつまでたってもその手のことは話さなかったので冗談かなとも思ったけど、ある日冗談ではないことがわかった。

佳織と友人同士になってから何ヶ月かたった二月、バレンタインで俺は別のクラスの女子からチョコレートをもらい、めちゃ嬉しくて佳織や順一に自慢していた。
「やったー。もらっちゃったよ。俺、実は初めてだったりするんだけど」
「いいなー。俺も欲しいよ、ホント」
「あのさ……広志くん(俺の仮名)……それ、食べない方がいいと思う」
「え?」
「ちょっと、やばいと言うか……気持ち悪いよ、それ」
いきなり佳織が変なこと言い出したんで、俺も順一もわけわからんという感じだった。
「え? なにそれ? どゆこと?」
「なんかね、強すぎる。……本人に悪気はないと思うけど、けっこう色々いれて、なんて言うのかな……呪いみたいになっちゃってるよ。体壊すかもしれない」
「はぁ? お前、何言ってるの?」
せっかくもらったチョコレートとそれをくれた人をけなされてるみたいで、俺はちょっと腹を立てて佳織と喧嘩しかけたけど、順一が「まあまあ」と止めてくれて、結局俺の家でチョコレートのうち何粒かを溶かしてみることになった。
十粒くらいあったやつのうち三粒とって溶かしてみたんだけど、ぎょえっという感じだった。
二つからは、ほんの少しだけど、細かく切った髪の毛みたいなものが出てきたのだ。
あとの一つからは特に何も出なかったんだけど、ずっと湯煎して溶かしていると、そのうち変な臭いがしてきた。
「? 何これ? これもなんか入ってるの?」
「……わからないけど、血かな? ひょっとしたら生理のかも。でもそれ以外かも」
俺も順一も気持ち悪くてたまらなかった。
結局チョコレートは、くれた人には悪いけど全部捨てることにした。佳織は呪いとか言ってたけど、それ以前に体に悪そうなので。佳織は見ただけで中に何か入っているということがわかったわけで、俺も順一も佳織の「見えるよ」を、信用するようになった。

さらにそれから一年ほど経った中学二年の十二月、冬休みの少し前のことだった。
俺と佳織は同じクラスのままで相変わらず結構話してたけど、順一は別のクラスになっていた。
ある日放課後久しぶりに順一と会って話していたら、佳織も昇降口にちょうど降りてきて、三人で帰るかということになった。
俺と順一は適当に話していたけど佳織はあまり話さず、何か様子がおかしいなと思っていたら、順一と途中で別れたとたんに「うえぇっ」と小さく声をだしてうずくまってしまった。
「おい! 佳織! どうしたんだよ!?」
佳織は口をおさえて、涙を流していた。
「どうしよう……広志君……どうしよ。順一君、死んじゃうかも……ぅえっ……」
「は? な、何言ってるんだよ。 ちょっと落ち着け。気持ち悪いんか?」
「どうしよう……」
「どうしようって……何なの、一体?」
「……順一君はやってないだろうから、多分親戚とかだと思うけど……人殺してるよ。ここ最近で。すごい恨まれてる。多分順一君にもまわってきちゃうよ……死んじゃうかも」
「……」
げーげー吐きながら言う佳織の背中をなでながら、以前のこともあり、俺はかなりびびっていた。でもまさかそんな……という気持ちも強かった。たまに通りかかる人が変な目で見てたので、この日は佳織を落ち着かせて帰った。
夜に佳織から電話があった。
「明日、順一君の身につけているものを持ってきて欲しいんだけど……できればシャツとか」
「え? 何に使うの、それ?」
「明日私学校休むけど、広志君、学校終わったら順一君のシャツ持って○○公園(近くの森林公園。さびれてる)に来てくれないかな。絶対に持ってきてね。絶対」
「ああ……?」
何かわからないうちに頼まれてしまったけど、帰りのこともあったし、言う通りにしてみた。シャツとかなんてどうやって手に入れようかと思ったが、体育着を忘れたことにして借りて、洗って返すということで手に入れた。
森林公園では佳織が待っていて、俺が体育着を持ってきたことを確認すると「こっち」と、林の中につれていった。

続く