[降霊実験]
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僕は息を飲んだ。
人間の右手首。切り口から血が滴って畳を黒く染めていた。
この部屋にいてはいけない。
僕は踵を返して部屋を飛び出した。
廊下を突っ切り、1階の居間に飛びこんだ。
ダイニングのテーブルの上に足首がころがっていた。
僕はあとずさる。
まずい。失敗だ。この霊は、やばい。
もう限界だ。僕は目を明けようとした。
開かなかった。僕は叫んだ。
「出してくれ!」
だがその声は誰もいない居間に響くだけだった。
僕は走った。家の勝手口に僕の靴があった。 
履く余裕もなく、ドアをひねる。だが押そうが引こうが開かない。
「出してくれ!」
ドアを両手で激しく叩いた。
どこからともなくかすかな声がする。
しかしそれはもう聞き取れない。
僕は玄関の方へ走った。途中で何かにつまずいて転んだ。
痛い。痛い。本当に痛い。
つまづいたものをよく見ると、両手足のない人間の胴体だった。

玄関の扉の郵便受けがカタンと開いた。
何かが隙間からでてこようとしていた。
僕はここで死ぬ。そんな予感がした。
そのときチャイムの音が鳴った。

ピンポンピンポンピンポンピンポン
続いてガチャっという音とともに明るい声が聞こえた。
「おーっす! やってるか〜」
気がつくと僕は目を開いていた。
暗闇だ。だが、間違いなくここはkokoさんのマンションだ。
「おおい。ここか」
部屋のドアが開き、蛍光灯の眩しい光が射し込んできた。
kokoさんと、みかっちさんの顔も見えた。
「おっと邪魔したか〜? スマン、スマン」
助かった。安堵感で手が震えた。
光を背に扉の向こうにいる人が女神に見えた。
その時kokoさんが、邪魔したわと小さく呟いたのが聞こえた。
僕は慌ててkokoさんから手を離した。
僕は全身に嫌な汗をかいていた。

続く