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結局彼女は自分が決めたことを完遂することなく生き続けた。
そしてあの日から4年経った18歳の頃,彼女にもようやく幸せが訪れた。
恋に落ちたのだ。
隣の家に住む青年で,年は21歳。マジメで誠実と知れた人物だった。
さつきちゃんの労働態度は極めてマジメだったため,この頃には里親にも
非常に気に入ってもらっていた。ふたりとも近所での評判もよかったので,
結婚することが許された。そしてさつきちゃんが18の頃,二人は結婚した。
ようやくさつきちゃんにも幸せが訪れた。
そして新婚初夜を迎えた。
さつきちゃんはそこで見てはいけないものを見た。
旦那となる男の背中には,4年前にさつきちゃんがつけた傷跡がある。
そう,夜這いを掛けて彼女に死を覚悟させたのは他でもないこの男だったのだ。

さつきちゃんは困惑した。大好きだけど恨むべき人。恨むべき人だけど大好きな人。
目の前にその男がいる。彼女はこの男を殺そうという結論に達した。
そして自らも,まったく同じ方法で命を絶とうと。
彼女は翌晩,早速実行に移した。
方法は至って単純だった。彼が寝込んでから手足を縄でしばり,
猿轡をした上で人気のない井戸に捨てるということ。
男を井戸に放り投げた後,自らも猿轡をかけ,手足を縛り井戸に身を投げた。
が,彼女が落ちたところには水がない。この井戸は枯れ井戸だったのだ。
男は井戸に落とされた際に頭を打って死んでいた。
が,彼女は男がクッションになり,死ねなかった。
手足をしばっていて猿轡をしているために,なにもできない。
彼女は飢えて死ぬのを待つのみとなった。
何日か過ぎると体力の消耗を感じ,少しずつ死を感じた。
極限状態になりかけたとき,彼女はあることを思い出した。

自分が「感謝する人」「恨む人」を決めていたこと。
彼女は決心した。自分はこのまま死ぬ。が,死んだときには
「感謝する人」にはおおいなる祝福を
「恨む人」には大いなる災いを与えようと。
それから1週間後に彼女は息絶えた。が,彼女の想いは今も生きている。
この話はさつきちゃんにとって,知られてはいけない過去である。
この話を知った人は「恨む人」にあたり,大いなる災いが降りかかる。
災いを避ける方法が一つだけある。自身も「感謝する人」になればよい。
これから毎朝起きたときに,G県の方を向いて
「さつきちゃん,私はあなたの味方です」と心の中で唱えて欲しい。
彼女が死ぬまでの1週間という期間,これを続ければ大いなる祝福が受けられる。
一日でも忘れたときは,貴方に大いなる災いがふりかかるでしょう。


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