[選り分け]

この話は自己責任でお願いします。

大正時代,昭和初期と鉄工所の景気が非常に良かったそうだ。
或る町にやはりそれなりの景気を誇る鉄工所があった。
何代か続いたけど,時流に取り残されて潰れてしまった。
経営者である男は負債を整理していたが,結局売れるものを
全て売っても負債は片付かなかった。
責任感の強かった男は,わが子を里子に出してでも
返すべき金を返そうと考えた。
結局,男はまだ幼い一人娘をG県某村に里子にだした。
里子に出された女の子はさつきちゃんと言う。
さつきちゃんはまだ11歳で,お嬢様として育てられた。
里親は彼女を奴隷のように扱い,とことんこき使ったが
お嬢様育ちのさつきちゃんがまともに働けるわけはない。
彼女にとって辛い日常が続いた。
少しずつ仕事も覚え,村での生活に少し慣れてきたのが
里子に出されてから3年後。さつきちゃんが14の頃だった。
慣れかけてきた生活が,ある日を境に地獄に変わった。
或る晩,彼女は夜這いを掛けられた。もちろん処女だった。
彼女は恐怖と絶望を感じ,自ら命を絶とうと考えた。
が,すこし考えた。
「このまま死んでしまっても,私が生きた証はなにも残らない。」
彼女はなにか一つのことをやり遂げてから命を絶とうと考えた。
が,毎日の労働もあり,彼女に許された自由は「考えること」
だけだった。その自由の中でなにかをやり遂げなくてはならない。
彼女は今まで自分が会った人々を「感謝する人」「恨む人」
にわけるという作業を,「なにか一つのこと」に選んだ。
一日一人ずつ「感謝する人」「恨む人」を決めていく。
自分が今まで出会った人全てを振り分けたとき,
命を絶とうと決めたのだ。
果たしてそれを実行していく。
が,彼女は昔お嬢様として育てられた。社交界にも通じていたので
今までに会った人の数が果てしなく多い。
最初は地道に続けていたが,次第に考えなくなる日が多くなった。

続く