[恐怖郵便]
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「こんな夜更けに・・・誰か帰ってきたのかしら・・・」
Yさんは、同じ階の誰かが帰ってきたのだと思いました。
眠い目をこすりながら、
気を取り直してトイレに行こうとすると、
「カッ、コッ、カッ」
足音が、ちょうどYさんの玄関の前あたりで止まりました。
「・・・?」
Yさんは不審に思いながら、息を潜めていました。
すると
「カコンッ」
ポストから何かが投函されました。

このアパートはもともとは古いため、
玄関のドアは下部に穴が開いており、
そこに郵便が投函される、昔ながらのポストでした。
ポストに投函された「何か」は、
そのまま玄関の靴の上に落ちていました。

「郵便・・・です」
ドアの向こうからかぼそい男性の声が聞こえました。
そして、また足音をさせて去っていきました。
「なんだ・・・郵便屋さんか・・・」
Yさんは一瞬、安心しかけたものの、
そんなわけがありません。
もう一度時計を確認しました。

2時49分。
間違ってもこんな時間に配達をする郵便局員が
いるわけがありません。
Yさんは恐ろしくなり、ベッドに潜り込むと、
震えながら朝になるのを待ちました。
朝、ようやく辺りが明るくなってくると、
Yさんはベッドから出て、郵便を確認しに行きました。
見ると、普通の官製はがきです。
恐る恐る拾い上げて、あて先を確認してみました。
「○山 ×夫 様」

Yさんはほっとしました。
あて先が自分宛でないことに、まずは安心したのです。
そして、手紙をひっくり返して文面の方を確認しました。
「・・・!」
Yさんは、心臓がすくみ上がるのを感じました。
はがきの縁が、1センチくらいの幅で、黒く縁取られていました。
そして、空白が大部分を占める中、
真中に無機質なパソコンの字で1行だけ、

「9月27日  19時31分  死亡」
とだけ記されていました。
Yさんは、誰かのたちの悪いいたずらだと思い、
そのはがきを捨ててしまいました。

そして、Yさんはそのままはがきのことなど忘れて、
普通に生活を送っていました。
9月の27日も、別段なにごともなく過ぎていきました。

続く