[四隅]
前頁

「キャー!」
という悲鳴に背筋が凍る。
みかっちさんの声だ。
ドタバタという音がして、懐中電灯の明かりがついた。
京介さんが天井に向けて懐中電灯を置くと、部屋は一気に明る
くなった。
みかっちさんは部屋の隅にうずくまって頭を抱えている。
CoCoさんがどうしたの? と近寄っていくと、
「だって、おかしいじゃない! どうして誰もいないトコが来
ないのよ!」
それは俺も思う。ポケットが来さえすれば京介さんを・・・・・・
まて。
なにかおかしい。
アルコールで回転の遅くなっている頭を叩く。
回転が止まらないのは変じゃない。5人目がいなくても、ポケ
ットに入った人が勝手に再スタートするからだ。
だからぐるぐるといつまでも部屋を回り続けることに違和感は
ないが・・・・・
えーと、最初の1人目がスタートして次の人に触り、4人目が
ポケットに入る。これを繰り返してるだけだよな。えーと、
だから・・・・・・どうなるんだ?
こんがらがってきた。
「もう寝ようか」
というCoCoさんの一言でとりあえずこのゲームはお流れになった。
京介さんは俺に向かって「残念だったな」と言い放ち、人差し
指を左右に振る。
みかっちさんもあっさりと復活して、「まあいいか」なんて言
っている。
さすがオカルトフリークの集まり。
この程度のことは気にしないのか。むしろフリークだからこそ
気にしろよ。
俺は気になってなかなか眠れなかった。

夢の中で異様に冷たい手に右肩をつかまれて悲鳴をあげたところ
で、次の日の朝だった。
京介さんだけが起きていて、あくびをしている。
「昨日起ったことは、京介さんはわかってるんですか」
朝の挨拶も忘れてそう聞いた。
「あの程度の酒じゃ、素面も同然だ」
ズレた答えのようだが、どうやら「わかってる」と言いたいら
しい。
俺はノートの切れ端にシャーペンで図を描いて考えた。

ACoCo    B京介


Dみかっち  C俺


そしてゲームが始まってから起ったことをすべて箇条書きにし
ていくと、ようやくわかって来た。酒さえ抜けると難しい話じゃ
ない。
これはミステリーのような大したものじゃないし、正しい解答
も一つとは限らない。俺がそう考えたというだけのことだ。でも
ちょっと想像してみて欲しい。あの闇の中で何がおこったのか。

1 時計
2 時計
3 時計
4 反時計
5 時計
6 時計
7 時計
8 時計
9 時計
10 時計
・・・・・・

俺が回った方向だ。
そして3回目の時計回りで俺はポケットに入った。
仮にAが最初のスタートだったとしたら、時計回りなら1回転
目のポケットはD、そして同じ方向が続く限り、2回転目のポ
ケットはC、3回転目はB、と若くなっていく。
つまり同一方向なら必ず誰でも4回転に一回はポケットが来る
はずなのだ。
とすると5回転目以降の時計回りの中で、俺にポケットが来な
かったのはやはりおかしい。
もう一度図に目を落とすと、3回転目で俺がポケットだったこ
とから逆算するかぎり、最初のスタートはBの京介さんで時計
回りということになる。1回転目のポケット&2回転目のスタ
ートはCoCoさんで、2回転目のポケット&3回転目スタートは
みかっちさん、そしてその次が俺だ。俺は方向を変えて反時計
回りに進み、4回転目のポケット&5回転目のスタートはみか
っちさん。そしてみかっちさんはまた回転を時計回りに戻した
ので、5回転目のポケットは・・・・・・
俺だ。
俺のはずなのに、ポケットには入らなかった。
誰かがいたから。

続く