[犬の散歩をするおじさん]
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集まった男子達は緊張のためか、いつもよりしゃべりまくっていました。
いくら私が「しーっ!」と睨み付けても、
「あーごめんごめん。・・・それでさ〜」と、とどまるところ知らず。
私はこれから起こることより、母に見つかって怒られることの方を恐怖していました。
この3人を招き入れたことを後悔しはじめたそのときです。
男子の笑う声の合間合間に、かすかに、
「チャラッ・・・・・・・」。

「来たっ!」という私の言葉で、その場の空気がいっぺんに固まり、
みんな一斉に耳を澄ましました。
最初のうちは、「聞こえないぞ?え?」と言い交わしていたのもつかの間、
「それ」が、だれの耳にも聞こえる距離までやってくると
まるでいきなりビデオの静止ボタンを押したように、三人の動きが止まりました。
「それ」がやってきたら懐中電灯を消す、ということも、
ラジカセの録音ボタンを押す、ということも、
というより、思考自体を喪失しているようでした。
私はそっと、録音ボタンを押しました。

唾を飲み込む音すら聞こえてきそうな静寂の中、
ゆっくりと、「それ」は近づいてくる。
やがて、鎖の音と共に、低い、底響きのするような声が聞こえてきました。
うたっているのです。
時代劇の結婚式のシーンで見たことのある、
「た〜か〜さ〜ご〜や〜〜〜」みたいな感じのものをうたっているのです。

身動きを少しでもしたら・・・息を少しでも吸ったら・・・
正気を失ってしまいそうな恐怖でした。

続く