[黒い奴]
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三日目も試験を終えての帰宅。時間もほぼ同じような頃合で今日は昼寝をやめようかと迷っていた
ひとまず、この日はベッドに倒れこまないで机に向かって…

眼が覚めるとベッドの上だった。また日があった
何がどうなってこうなったのか、枕の方に足を投げ出し、頭は蹴飛ばした布団に乗せた格好
そしてお決まりの金縛りになってた
三日連続、冗談ではすまなくなっていたオイラがいた
前日のように窓を見る。ベランダにはまた黒い奴がいた。結構やばかった。叫びそうだった
金縛りがこんなにもやばいなんて思いもしなかった
大声をだせば、一階の爺ちゃんも助けに来てくれるかもしれない、と叫ぼうとするが声は出ない
黒い奴はいつの間にか窓を開けて、ベッドへの梯子を迷わずに登ってくる
そして、この日は近づいてきたのだ
「来るんじゃねぇ!」とか叫んだつもりだったけど、黒っぽい胴体が這うように耳元へ
何をされるのか、わけもわからずに、とにかく神様とか仏様とか祈っていた
黒い奴、オイラに馬乗りになる体勢で、頭を耳元へ
「…あぶないよ、あぶないよ」
声色は伸びたテープとか、そんな気味悪いものじゃなかった。普通の男っぽい声だった
「ふざけんな!」とか、とにかく大声を出して右腕で押し返そうとした

手が動いて、思いっきり壁をぶん殴っていた
黒い奴は消えて、また、窓があいていた

3日目のあれは洒落にならないくらい怖かった
汗びっしょりで、しばらくはベッドから動けなかった。ずっと窓を眺めていた
心霊体験なのか、微妙だったけど、とにかく怖かったんだよ

その後、わが愛する妹に事のしだいを伝えてみた
「ああ、お兄ちゃんのPCってさ、死体の写真とか心霊ものの動画多いし呪われてるんでしょ」
とか言われた。なぜPCの中身を知っているのかは問いたださなかったが
たしかに多い。日本、外国問わずに死体とか、事故現場とか、悪趣味なファイルが多々
こいつらのせいか?と少しばかり心配になり、数ヶ月かけたコレクション達は一気にデリートした
周囲に霊感のある人間とかオイラにはいないし、とりあえず、藁をもすがる思いだったんだ
妹の力、とか言うじゃないですか!
あとはうちの庭にある祠様に頭をさげ、一族の稲荷様へも頭をさげ、先祖のお墓にも行き
「冗談じゃないです。助けてください」と必死になって祈った

そして4日目から
黒い奴は現れなくなってくれた。勉強する余裕もなく、試験はオワタ
「…あぶないよ」って黒い奴の言葉は警告なのかわからないけど、
今のところはオチになりそうな交通事故とかはない、身内の不幸も特にはない
ベランダの盛塩が黒くなったり、とかもない。うちの犬が舐めててビビッたけど
庭の祠様のおかげかなぁ…とか考えているオイラ

期待はずれの終わり方で申し訳ない
でも、3日目はマジで怖かったんだよぉ


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