[感覚]

幽霊そのものをみたことはないが、
俺はリア厨の頃不思議な体験をしたことがある。
だいたい夏休みともなると、その年頃でも
いつしか昼夜が逆転してくるものだが、ある日
日も跨がないうちに睡魔に襲われた。
 
…それからどれくらいの時間が経ったか。
「これはヤバイ!!」という意味不明の感覚に飛び起き、
なにも考えず、ただすぐに部屋の明かりをつけ、
怖いという感情だけが全身鳥肌という証拠を残し、
あるだけだった。

ゾォ…っとしながら時計をふと見ると
午前3時ちょうどをほんの少しだけまわっていた。
このまま寝るのはなぜか嫌だったので、飲み残しの
午後ティー(ミルク)で心を鎮め、
寧ろ寝ないで朝まで起きていようと決心。
既にちょっと睡眠も十分だったのでゲームをはじめた。

夏と言う事もあり、程なく夜が明け、徐々に恐怖も溶け、
カビ臭い座椅子に屁をぶちかます余裕も出た。大分明るくなったので
ふら〜っと居間へ行くと、姉と母は既に起きていた。
朝の6時なのに?とも思ったが、どうも顔が暗く空気も重い…。
…隙を突き俺は夜中の不思議な感覚があったことを話し始めた。
居間は夏だというのにひんやりとしていた。すると、
姉からとんでもない言葉が出てきた。
「ラジオ聞いてたら壁から顔の形が迫ってきた」と。

…目を丸くして「えっ!?」というと
母が続けて「布団の上から誰かに這われた」と言う。いつもなら
アホなこといいなさんな!と一蹴するが、二人の
辛らつな顔と、自分自身の感覚が嘘ではないことを証明していた。

…じゃああの時間に感じたのは…そうだ、姉が夜中聞くラジオ、
オールナイトニッポンしかない。時刻的にもみんなほぼ同時だ。
きっと俺は見たり触れられたりで感じずに別の感覚で感じ取り、
キミの悪い恐怖を直感的に感じていたのかもしれない…。何かが
来ていたのは確実なのか、と思うと再び全身総毛立った…。

ふいに電話がなった。母と離婚した父の、すぐ上の姉からだった。
「マサちゃん(母)、連絡しようか迷ったけど昨日、Y男(父)死んだの」
…スーッと涙が流れた。


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