[人食い熊]

1915年に北海道留萌苫前村で起きたヒグマによる連続大量殺人事件です。
当時は開拓民と呼ばれる人たちが村を興し農業や狩猟に従事していました。
そこへ・・・。

【11月中旬、熊出現!】
大柄な熊が現れ、農家にあるとうもろこしを食べはじめた。
見つけた村人が4人の猟師を呼び、熊に発砲して命中させる。
熊は血痕を残して逃走した。仕留めることはできなかったが、
これで熊も懲りただろうと村人は判断した。

【12月9日、熊、民家を襲う】
冬季の備えもあって男たちは農作業に精を出していた。
そこに再びとうもろこしを狙って「太田邸」に熊が現れる。
熊は家屋の壁を体当たりで突き破って内部に侵入した。
不幸にもその時太田邸にいたのは、安陪まゆという女性とまゆに
預けられていた蓮見幹雄という子供だけだった。
熊は幹雄の首を爪で切り裂き、さらに頭に噛みついて即死させた。
まゆは薪を熊に投げつけて抵抗したが結局捕まり、そのまま家の外
へひきずられていった。
太田邸には幹雄の惨い死体と飛び散った血痕が残るのみだった。

昼食をとりに太田邸に戻ってきた寄宿人、長松要吉が惨状を発見、
ただちに村人たちに報告する。
村人たちは太田邸から少し離れたところにある「明景邸」に集まり
警察への通報や熊への対策を練った。

【12月10日、村の男たち、熊に出し抜かれる】

明景邸に集まっていたうちの明景安太郎と斉藤石五郎、両二名は
家長として、それぞれ警察への通報や熊を殺すための人手を
集めるために明景邸を出た。
残る男たちは行方不明となったまゆを捜すために森に入った。
そして150mほどの地点で熊と遭遇。
しかしながら遭遇と同時に熊が突っ込んできたために
即座には対応できず、また銃の手入れも万全ではなかったため、
効果的な反撃はできず散り散りにさせられるが一発だけ発砲する。
発砲にひるんだ熊が逃走したため、捜索を再開。
途中で雪に埋められかけたまゆの頭部と足を発見する。
まゆの遺体の一部が雪に埋められた理由は熊が保存食として
あとで役立てるためだと思われた。

村人たちはまゆの遺体を太田邸に運びこみ、そこで熊を待ち構えることにした。
自分の獲物を奪われたら取り戻そうとする熊の習性を考えての
作戦だった。村人たちの予想通り、夜の8時に太田邸に熊が突入
し襲いかかってきた。
予想していたにも関わらず熊の勢いに押され、現場はパニックに
なった。かろうじて銃で反撃したが弾は外れ、またも熊は逃走して姿を消す。
熊に逃げられてしまった村人たちは今から明景邸に集合して
再度策を練ろうと考えた。

だが、熊はただ逃げたのではなくそのまま明景邸に
先回りしていたのだった。

【明景邸での新たな惨劇】

その時の明景邸には、太田邸での惨劇を聞いた女子供が避難していた。
長松要吉を除いた男たちは太田邸にて熊を仕留めるべく
出払ってしまっていた。

熊は窓を破って明景邸に突入、そのまま囲炉裏の大鍋に
ぶつかって明りは消え部屋は真っ暗になる。
妻の太田ヤヨは逃げようとしたが、そこに次男の勇次郎が
しがみついた。そこへ熊が襲いかかり、ヤヨが背中におんぶ
していた梅吉に噛みついた。さらにヤヨも頭を噛みつかれる。
女たちを守るべき長松要吉はそれを見て戸口に向かって逃走、
熊は、飛び出した長松要吉に注目したため、その隙にヤヨは
勇次郎と梅吉を連れて明景邸から脱出することに成功した。
長松要吉はとっさに物陰に隠れようとしたが追いつかれて、
爪の一撃を食らい負傷。
要吉の悲鳴を聞いた熊は、部屋を見渡し標的を変えた。
他にもまだ女子供がこの家にいたのだ。
熊は明景家の三男である金蔵と斉藤家の四男である春義を殴り殺し、
さらに斉藤家の三男である巌に噛みつき床に叩きつけて致命傷を与えた。
それを見た母親の斉藤タケは悲鳴を上げた。その悲鳴でタケに
気づいた熊は彼女を捕らえ上半身から食い始めた。

悲しいことにタケは熊に対して、お腹に子供がいるからやめてくれるように
頼んでいたらしい。もちろん熊に通じるはずも無かった。

続く