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[名のない病気]

「この世にはな、幽霊だの妖怪だの、そんなモンはいねぇ」
僕ら大工仲間でも、特に兄貴分として慕われているユウ兄が口を開いた
「でもよぉユウ兄ぃ、いっつも血だらけの女見たとか
 上半身だけのバアさんに追っかけられたとか言ってるじゃんか」
ケンさんがケラケラ笑いながら言う
仕事が終わり、事務所でワンカップを傾けながらの夕暮れは、
時折ユウ兄ぃのおもしろおかしい怪談話で盛り上がるものだった

「おそらく、そいつぁ妄想なんだよ、自分が想像で作り出した幻覚だ
 んでも、古今東西 こういった幽霊見たってヤツが後を絶たない、しかし幽霊なんてのはいるわきゃない
 そこで俺はこう考えるようになったのよ、こいつぁ病気じゃねえかってな」
「病気?」
「おう、病気よ、現代医学でも解明できねえ、いや病名すら与えてられない病気なんだよ
 何千年も前からこの病気はあったんだよ、大昔の書記にもバケモン出てくるだろ?
 人間にときたま発症しちまうのさ、ちょっとした幻聴が聞こえる軽度なものから
 幽霊という自分の想像に頭が耐え切れなくなってイカれて死んじまう重症なものから幅広くあるのさ」
なるほどっとケンさんが苦笑しながら大関をクイっと流し込む

幽霊を見てしまうのは病気・・・自分の想像の産物・・・

「さて、そろそろ帰るかね、日もすっかり暮れちまった」
「おう、ところでユウ兄、最近ミヨちゃん来ねえじゃねえか、ケンカしちまったのか?」
「あ、あぁまぁそんなところだ、ちっとケンカしちまってな、アイツぁ今実家帰っちまってる」
「おいおい、あんだけおっとりした世話焼きの嫁さん泣かせちゃダメだろう、あんだけできた人は今いないよ?」

・・・病気、自分の想像・・・はたしてそうだろうか?
ユウ兄のお嫁さんのミヨさんは、いつも穏やかでにこにこしてた、そんな優しい顔しか知らない僕に

・・・こんな恐ろしい形相をしたミヨさんが想像できるのか・・・?


次の話

Part210
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