[疑心暗鬼・後日談]

前スレ終わりのほうで、風呂の天井のメンテナンス押し上げ蓋がずれていた話を書いた俺だ。
モバイル版まとめサイトで[疑心暗鬼]という題名をもらってる。ありがとう。

またあの蓋がずれていた。

今日は用事があり16時過ぎから出かけ、19時頃に帰宅した。飯も食わずいつも通り居間で2chとネット三昧。
21時を回ったところで二日ぶりに風呂に入ろうと考えた。
風呂を沸かすのはめんどくさいのでシャワーにしようと決め、風呂場の電気をつけ扉を開けると、
目の前斜め上の風呂場のあのメンテナンスの蓋が、ずれていた。
そろそろあのショックも薄れ、自分の思い違いか記憶の混乱かと思い始めていたのに。

前回よりずれは大きく、15cmくらい。
ぽっかりと暗い屋根裏の闇。鈍く銀色に光るダクトのようなもの。
前回は絶対になかった、蓋に固定された緑色の電線。

身動きもできず、思わず「こえーなおい」「なんだよなんだよ」と口にする。
しばらくそのまま待ったが、動きはない。音もしない。何かの気配もない。
こわごわと手を伸ばし、蓋を少し持ち上げ、定位置に動かし、蓋を閉める。

『どうしよう・・・』
前回のことは錯覚じゃなかった。明らかに異常な何かが起こっている。
マンションの掲示板に何らかの工事やメンテナンスが入る告知は、当たり前だがずっとない。
何かが出たという騒ぎもないし、警察も訪ねてきていない。
ふいに無性に腹が立った。全身がこわばり鳥肌が立っていたが、ムカついた。
『なんで俺なんだよ』 その何かに負けたくなかった。
やけくそのようにそのまま服を脱ぎ、お湯を出し、シャワーで身体と頭をを洗い、風呂を出た。

身体を洗っているときから今まで考えていたのだが、その何かは俺に己の存在を訴えているのだ。
俺が部屋にいることは物音や灯りやタバコの匂いで確実に気付く。なのにわざわざ蓋をずらして立ち去る。
警告なのか?お願いなのか?人間なのか?あの世のものなのか?

分からない。 俺にできることは、ただ待つだけ。 何かが起こるのを。


次の話

Part210
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