[赤ちゃんを返せ]

今から10年ほど前、高校生の時に体験した話です。
私たちは修学旅行で、ある海に行きました。

グループ毎にホテルの部屋をあてがわれたのですが、
私のいたグループは、A、B、C、私という
メンバーで、みんながみんな、いわゆる不良でした。
夜になって、他のグループはみんな就寝しましたが、
当然私たちのグループがおとなしく眠るはずがありません。
結局女子の部屋に行こうなんていう流れになり、
その場も「いいねえ」という雰囲気になりました。
B「と言ってもうちのクラスの女最悪だから、他のクラスの女にしようや」
ということで私たちのクラスがいたホテルから
少し離れた場所に宿を取っていたクラスの女子の部屋に行くことになりました。
私たちはこのとき、Cが一切口をきいていなかったことに気づきませんでした。

前もって公衆電話からそのクラスの女子のポケベルに連絡をいれ、
入れるようにしておいてくれ、と伝えてから、
とりあえずホテルを抜け出しました。
ホテルの裏側は海岸で砂浜になっており、
私たちは月明かりで見えるほどの岸壁沿いを歩いて
目的のクラスのホテルに向かいました。

50メートルほど歩いた時だったでしょうか。

Cがぼそっと呟きました。
「ここは嫌な感じがする・・・・帰った方がいい」

彼は快活で、いつも笑いを振りまくような男だったのですが、
そのときの彼の声は今までに聞いたことがないほど、
真剣で思い口調でした。
さすがに一瞬私たちもドキッとしたのですが、
その動揺は、
「お前、霊感とかあんの?怖がってるだけじゃねえの?」
というAの言葉にかき消されました。
いや、みんなも意識的に消そうとしていたのでしょう、
その場が小さな笑い声で包まれました。

続く