[御守り]
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帰り道で、泥棒グループの相談男が、
「結婚するために邪教(キリスト教から見て)に改宗したんだな。それでもロザリオが
 捨てられないくらいのクリスチャンだったなら、随分苦しんだんだろうな」
と言った。友人は、後ろめたそうな暗い顔で
「……悪いけど、俺にはどうしようもない」
と言った。
「あいつ(友人彼女)のこと、あれから何回か夢で見たよ。いつも
「凄く怒ってて止められない。ごめんなさい。あなただけしか私は守れない」
って言うんだ」
俺は、何も言うことがなくて黙ってた。

相談男は、その次の日に死体で見つかった。
何かの薬の飲みすぎで眠ったまま死んだらしいと聞いて、
俺は内心で「わりと安らかで良かったな」とか思ってしまった。

その後すぐに俺も会社を辞めて、何とか次の勤め先を見つけた。
元いた会社は、見事に借金漬けになって潰れた。
最後のほうには、辞めたりノイローゼで入院したりがゾロゾロ出て、
凄い有様だったらしい。事故死(自殺かもしれない)や自殺者も複数出てたそうだ。
俺の完全な想像だが、少しでも霊感のある奴はお守り事件から後、全力で再就職先を
探してたんじゃないかって気がする。
全く見えない奴ばっかりが被害を受けたのかと思うと、何だか理不尽な気もしてる。

友人は、その後でクリスチャンになって教会に行くようになった。
「思い出すと、聖書読んだり、結婚式をカソリック式でやれないかって
言ってたり、彼女、何か拘りがあったみたいだから。洗礼を受けるとこまでは
気が進まないって迷ってたけど、ちゃんと式が挙げれてたらこうしてたと思う。
だから。……そのアフリカの人の分も、静かに眠れるように祈っとくよ」

俺には、キリスト教も何も宗教のことは解らない。
そのアフリカ人の女性が祟ったんだとして、正直、何がそんなに気に障ったのかも解らん。
ただ、宗教に関係すること、というかどんな宗教でも怖いのは、
「そこまで神様に執着する本物の信者の執念」なんじゃないかと、何となく思った。

以上だ。


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Part208
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