[真っ赤な葉書]
前頁
Sちゃんはもともと体が弱かったんだけど、 
その後、学校に来なくなった。 
中学ぐらいになってから、「気が触れて精神病院に入院してる」とか、 
「あこんちの子はキツネが憑いた」とか、ウワサになってた。 
でも、田舎ってそういうところ閉鎖的で、 
実際のところ何が起きてたのかは、実はよく知らないままだった。 
Hの方はそれ以来こっちの田舎に来ることがなくなったんだけど、 
ちょっと事情があって連絡を取り合うようになって、 
いつごろくらいだったか、Hが「Sちゃんから葉書が来た」と言ってきた。 
真っ赤に塗りつぶした葉書に、教えてもいないのに住所が書いてあって、 
毎年毎年送られてくるようになったみたいだった。 
Hはちょっとおかしくなったんじゃないかと思うくらい、 
電話をかけてきてはあの日のことを詳しく話したりしてた。 
その後しばらくして、Hが「おはらいにいく」と言ってきた。 
これまで届いた葉書を全部持って、それに憑いてる念(?)を落としたら、 
もう葉書は届かなくなるとか言っていた。 
「オマエ、これまでの葉書全部もってんのか?」と聞いたら、 
捨てるのも気持ち悪くて一つ残らず取ってあると言ってた。 
電話の様子がおかしかったから、一緒に行くか?と聞いてみたけど、 
Hは「いや、他の人と行くから・・・」と言われたので、それ以上言わなかった。 
おはらいの後、Hから電話がかかってきて、 
「これでもう大丈夫だ!」とかやたらハイになってたんだが、 
結局しばらくたって、またHから「葉書が来た」と電話があった。 
Hは取り乱して、「おはらいもしたのになんでなんだよう!」とか、 
「なんで俺ばっかり」とか電話口で泣きわめいてた。 
様子が変なのは十分分かったけど、俺も仕事だったんで、 
「また後で電話する」つって、電話を切ってしまった。 
でも、それ以降、Hとは連絡が取れなくなった。 
携帯もずーっと電源が切られているし、会社にも行っていないようだった。 
Hがそのころ付き合っていた彼女の連絡先を知ってたから、電話してみたら、 
「ちょっと前に別れた。だってあの人、変だったじゃん。 
どうせ、あの葉書の子にでも呪い殺されたんじゃないの?」 
なんて言って笑ってた。 
俺はなんだかその子のことが怖くなって、電話番号も消して、係わりを経った。 
興味本位で肝試しなんか、しかも神社でするもんじゃねーなというか、 
そんな話。終わり。