[真っ赤な葉書]
俺は子供んとき結構な田舎に住んでたんだが、 
そこに毎年、夏休みだけ遊びに来るヤツがいた。 
東京に住んでて、夏休みだけ長期でじいちゃんの家に預けられてたらしい。 
田舎で子供もあんまりいなかったから、 
俺とそいつ(H)と、もう一人同年代だったSちゃんって女の子と、 
3人でよく海で泳いだり、チャリで遠くまで行ったりして遊んでた。 
あの頃、昼間みのもんたの番組で、 
本当にあった怖い話って特集やってたの、覚えてる? 
おも●っきりテレビの特番で、夏休みだけやってたんだ。 
アレ見て何となく、俺らも肝試ししよーぜって話になって、 
俺が「今から神社に葉書を一枚置いてきて、夜中にみんなで取ってこよーぜ!」 
みたいなことを言って、みんなで葉書を置きに行った。 
その日、確か地域の集会みたいのがあって、 
大人はみんなそれに行って夜中までいなくて、 
家から出ようと思えば出られる感じだった。 
それで夜中にみんなでこっそり家を出てきて、置いた葉書を取りに神社へ行った。 
Hは怖がっているのが見え見えで、 
俺は実はSちゃんのことが好きだったから、 
怖がらないでいいとこ見せようなんて張り切って、 
ずんずん神社の中へ入ってった。 
神社の賽銭箱の上においといた葉書は、まだそこにあって、 
俺がそれを持ち上げたら・・・・・・ 
葉書が真っ赤に塗りつぶされてたんだ。 
俺らは悲鳴を上げて神社の外まで猛ダッシュした。 
とにかく怖くて、早く家に帰りたかった。 
境内まで走り出て振り返ったら、 
Sちゃんが付いてきていなかった。 
Sちゃんはまだ賽銭箱の前にいて、 
変な風に体を折り曲げて、うずくまるようにしてた。 
俺とHはでかい声でSちゃんのことを呼んだんだが、 
Sちゃんは全然気がつかなくて、 
そうしてるうちにHがSちゃんのとこへ走ってった。 
俺は情けないことに、怖くて足がすくんでた。 
HがSちゃんを助け起こそうとしてたんだが、 
Sちゃんは全然動かず、Hが俺の方を向いて「何やってんだよ!」 
みたいなことを言って、俺も慌てて走っていった。 
Sちゃんは半分白目を剥いて、うげえええええとか言ってて、 
俺は怖くなって、二人を置いて大人達を呼びに行った。 
親たちが集会後の飲み会をいつもしてる飲み屋に行って、 
泣きながらしどろもどろに説明して、 
親父からは2発ぐらいゲンコツで殴られて、神社に連れて行かれた。 
それで、親父たちと一緒に神社に戻ったら、 
まだ二人はそこにいた。 
でも、俺そこで変な物見ちゃったんだよ・・・。 
HがSちゃんの両腕を掴んでゆすってて、 
Hの背中には細い白い腕みたいのがぐるっと巻き付いてた。 
最初、それはSちゃんの腕だと思ってたんだけど、 
もう少し近寄ったら、Sちゃんの腕はだらんと地面についてたんだ。 
だから、もう一組、誰かの腕がHの背中に回されてた。 
それは、親父が二人の名前を呼んだら、ふーっと消えたんだ。 
消えたっていうか、Sちゃんの中に入ってったように見えた。