[カウンセラー]
まずこの話に幽霊の類は一切出てこない。 
だから、そっち方面が好きな人は華麗にスルーでもしてくれ。 
俺が心理学部の学生だった頃に話好きなゼミの先生がゼミの合間に話してくれた話。 
ちなみに先生の話がホントかどうかは保障しない。 
確かめる術はあるがホントだった時が怖いので俺は確かめない。 
以下、先生の話。
私の友人にカウンセラーがいるんだよ。しかも、結構腕のいいカウンセラーが。 
まだ、歳も若くて30そこそこかな。彼についての話をするよ。 
君達も心理学なんて学問を専攻したくらいだから人の中身だとか、心の内側を知りたくて 
こんな潰しの利かない学問を専攻したんだろうな。 
中には太郎君(俺のこと)みたいになんでココにいるのかが不思議な奴もいるが。 
まあ、そのカウンセラーの友人もそんな一人で、あまつさえそれを職業にしたわけだ。 
彼曰くカウンセラーってのは、患者の精神を共有して補強する仕事らしい。 
未使用の鉛筆を真ん中から削るんだ。カッターでね。 
そうすると、真ん中だけ木の部分が削れて、芯が剥き出しになるだろう。 
その鉛筆にちょっと力を入れれば、簡単に真ん中から折れちゃうだろ。 
カウンセリングに来る患者さんの精神はそんな状態なんだそうだ。 
そんな状態の患者さんから話を聞いてあげて処置するのがカウンセラーのお仕事なんだと。 
患者さんの精神はさっきの鉛筆みたいな状態だから下手しなくても簡単に折れてしまう。 
だから、鉛筆の削りカスがあるだろ。それを綺麗にして芯が剥き出しの部分にあてて補強してあげるんだ。 
もちろん一度壊れたものは完璧には元に戻ることはない。 
だからなるべく芯が折れないように、鉛筆が壊れないようにそーっと補強してあげるんだ。 
カウンセラーができるのは底まで。後は患者さん自身が補強した削りカスと芯の部分を補強していかなくちゃならないんだよ。 
例えが分かりにくかったかな。でもそう言う事だそうだ。 
でな、初めに言ったけど友人は腕がいいんだ。 
神経尖って、疑心暗鬼の塊みたいな患者さんをリラックスさせて、安心させて、少しずつ 
話を聞いて、患者さんの心を補強してあげるんだ。とてもスムーズにね。 
彼なら時間を掛ければどんなに症状の重い患者さんからでも話を聞き出せるだろう。 
言葉通りにね。そう話を聞き出せるんだ。どんな話でも。 
友人は腕はいいんだけど、かなりサディスティックな人間でね。 
しかもSMみたいなサディスティックじゃなくて精神的にサディスティックなんだ。カウンセラーなのに。 
普段は抑えてるみたいだけど、たまに抑えられな区なっちゃうみたいなんだ。 
で、友人は抑えきれなくなった時どうしたと思う? 
患者さんの心を折っちゃたんだ。真ん中からね。 
折ったって言うのは正しくないのかもしれない。 
さっきの鉛筆を思い浮かべてみてよ。 
真ん中だけ芯が剥き出しで、その周りを削りカスで補強してある鉛筆を。 
友人はねせっかく自分で補強した削りカスをゆっくり時間を掛けて剥してくんだ。 
芯が剥き出しになるまでね。 
そして芯が剥き出しになったら今度はカッターで滑らすようにしてその芯を削ってくんだ。 
ゆっくり時間を掛けてね。 
芯はどんどん薄くなっていくだろう。そうやって真ん中の芯が薄くなっていった鉛筆はどうんると思う・ 
ある時点で両端の重さに耐え切れずに自分から折れるだろう? 
そうやって回復してきた患者さんをゆっくり狂気の世界に戻していって、最後には患者さん自ら「ポキン」。 
それをずっと見てるんだよ。最初から最後まで。な、サディスティックだろう? 
でも、友人はいい奴だよ。 
折れちゃった患者さんのアフターフォローも忘れないんだから。 
今日もきっと自分を抑えながらカウンセリングをしてるんだ。 
彼がポキンとしたくなるような美人ちゃんを待ちながらね。 
でも、自重を支えきれなくなって折れちゃうなんて、 
やっぱ人間なんて脆いもんだ。了 
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ごめん、夜中だし、いいかなって思ったんだ。 
また書く時があったら気をつけるよ。