[抱き合わせ]
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親父の話によると、その家は俗にいう『村八分』みたいな状態になっているとのこと。
『村八分』というと語弊があるけど、とにかく周囲の家はA家とあまり深く付き合いたがらないし、
A家も周囲の家と付き合うのを拒んでいるらしい。言うなれば一軒だけ被差別部落状態。
知っての通り、東北には被差別部落は存在していないのにも関わらず。

「どうして」と聞いたら、どうもその『守り』というのにいわくがあるらしい。

関西からその神社のご神体が貰われて来たとき、この地方に、
ご神体と一緒に何か『良くないもの』も一緒に持ち込まれたのだという。

無論、その『良くないもの』までが、ある種の呪物なのか、それとも風習とか文化のことを指していたのか、
そこまではわからないけど、とにかく『守り』というからにはちゃんとした物だと思う。

親父は、「なるほどな……A家だったのか……道理で……」としきりに頷いていた。

つまり、その本と親父の話を合わせて考えると、その神社とご神体、
それとその『良くないもの』を外に出さないように『守る(管理する)』家の末裔がA家ということになる。

しかし、親父から言わせればそれは違うらしい。

狭い田舎のこと、A家だけに皺寄せが行くのはどうもおかしいし、それだけでハブられるのもおかしい。
大昔、この辺りの人々は元々根無し草だったA家の先祖をこの地に住まわせる交換条件として、
その『良くないもの』の管理する役目をA家の先祖に押し付けたんだろう、と、そういうことを言っていた。

親父もその『良くないもの』が何なのかは知らないが、それはかなり力があるものだとも言った。
どうやらその『良くないもの』は強い呪いを振りまく、ある意味、神仏にも近いものらしい。、
無論、A家がその役目を遂行している限り、一族にいい影響は出ないだろう。

しかし、A家はそうでもしなければ住まわせてもらえなかった。
まさにこの辺りの事情は『コトリバコ』と同じなんだろうけど。

ごめん。これで終わり。


「この辺りは飢饉ばっかりだったろ? だから神仏にすがろうと思って神社を持ってきたんだろう。
 なんでそんな『良くないもの』まで持ってきたのかは知らないし、知らないほうがいいと思う。
 けどな、昔から言うべ? いいものと悪いものは一緒に持ってないと効果が出ない。
 だから持ってこなくちゃならなかったんだろうけどよ……」

親父はそう言って、今度こそ口をつぐんだ。親父以外の家族は顔を見合わせていた。
しかし、ばあちゃんだけはやっぱり親父と同じように顔を伏せていた。

実はA家は跡取り息子がいわゆる『その道の人』で、借金に借金を重ねているという噂があった。
そういう噂があったから、親父の話には説得力があった。


もう10年以上前の話だし、今もその神社には毎年初詣に行く。俺の実家と神社には直接しこりはない。
けれど、やっぱりA家だけは違った。三、四年前に、A家は破産して一家離散してしまった。

今A家の家には新しく来た人が住んでいるけど、その『守り』の役目がどうなったのか、
その『良くないもの』の管理がどうなったのかは、今もわからない。

俺が聞いた話は以上。もちろんこれが『リョウメンスクナ』やら『コトリバコ』と
同じ類のものだとは思えないけれど、かなり近いものだとは思う。それに関西に由来するものらしいし。

546 本当にあっ御神体を譲り受ける代わりに代償として疫病神も押し付けられたっとことか。
ドラクエ買うのに糞ゲー抱き合わせ販売みたいな。


547 533 ◆ZaP/>>546 そうかも知れないが、元々岩手なんて二年に一回一揆があったような県だ。
そこら中に天保飢饉の供養塔があるしね。口減らしされた子供がザシキボッコになったって話もある。

なんらかの理由さえあれば餓死体からコトリバコみたいなものを作るのは造作もない。
逆にA家が似たようなモンを作ってハブられたってのが真相かも知れん。


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