[引きずる]
実話なので、人に話して怖いかどうかわからないけど投下する。 
昔、俺はよく友達とゲームしてたんだ。 
俺と友達は、お互いそのゲームに当時はハマっててね。 
当時ほとんど毎週末俺は友達のアパートに行き、徹夜なんか当たり前でゲームやってた。 
一旦ゲームを始めるとそれ以外の事をするのが面倒だから、俺は友達のアパートに行く前に必ずコンビニで大量のお菓子とジュース買ってさ。 
そうやってゲームしてたんだが、ある週末にいつものようにゲームしてると、二日目の徹夜に突入した時にジュースが切れちゃってね。 
コンビニまで行くのも面倒だから、友達が「下まで降りて自販機でジュース買ってくるわ」って言ってくれた。 
友達の部屋は三階だったんだが、一階まで降りると道沿いにすぐ自販機があった。 
俺も 
「おう、ありがとう。お前が戻ってくるまでに自分の番終わらせとくわ」 
って。 
それでゲームしながら一人で待ってたんだけど、二十分たっても三十分たっても友達は一向に戻って来なかった。 
時計を見ると夜中二時半だった。 
俺は少し嫌な予感したけど、 
「まあ気が変わってコンビニまで行ったかな?」 
くらいにしか思ってなかった。 
するとその友達から携帯で電話かかってきた。 
俺が電話にでてみると、友達は電話の向こうでえらく息があがっててね。 
しかも何かに怯えてたような感じだった。 
俺が 
「どうしたの?今どこ?」 
って聞いたら 
「今…ハァハァ…えー…アパートから五百メートルくらい離れた所…ハッハアッ!さっき自販機でジュース買おうとしてたんだけど、変なお婆さんに会って…怖かった!」 
その友達とは付き合いが長かったんだが、それまで見たことないくらい友達は怯えてて、俺はとりあえず友達を落ち着かせなきゃと思い 
「話は後で聞くから、とにかく戻っておいでよ」 
と言ったんだが 
「戻りたいんだけど、そのアパートの自販機の所でお婆さんに会ったんだから、戻れない!」 
俺もその時下まで降りて友達を助けに行きたかったんだが、チキンだからそんな不気味な老婆がいると聞いては降りれなくてね。 
(笑) 
なんとか電話を繋いだまま友達をなだめてアパートまで誘導した時には、幸いその老婆はいなかったらしい。 
友達は当然部屋までダッシュ。 
で、どんな老婆だったかと聞いたら、とにかくこのアパートの周りで夜中に老婆が一人で歩いてる事自体異常なんだが、その老婆は何か少し重そうな荷物をズルズル引きずっていたそうだ。 
その姿を友達は気味悪く感じながらも、無視しながら我慢して 
「早く通りすぎてくれ!」 
と思ってたんだそうだ。 
そしてその老婆が友達の後ろを通りすぎようとしたその時、 
急に老婆は立ち止まり荷物を抱くように持ち上げて、押し殺したような声で 
「…すまんがこの荷物を預かってくれんかのう…」 
と言ったらしい。 
そこで友達は耐えられなくなって、その場から逃げ出した! 
それから友達とは 
「結局その荷物の中身はなんだったろうな」 
「赤ん坊とか、バラバラにされた遺体の一部だったら怖いな」 
などの話をしつつも、友達は部屋に戻ってきた安心感とお互い一人ではないので、少しずつ雰囲気も明るくなり、そんな話でも冗談混じりで話せるようになった。 
で、その奇妙な老婆もそんな夜中に歩いてたから気味悪く感じるだけで、幽霊なんている訳でもなく、荷物も別に普通の荷物だよ、と。 
現実的には、ただちょっとおかしなお婆さんに遭遇しちゃったね、で話は終わった。 
で、その夜は友達も疲れていつもより早く寝てしまった。 
俺は本当はそんなに眠たくなかったんだが、友達と睡眠サイクルを合わせないと一緒にゲームができないので、俺も無理にでも寝る事にした。 
いつものように友達はベッドに寝て、俺は床に適当に寝た。 
どうせ睡眠時間は短めにしか取らないから床でもかまわない。 
しかし俺は眠たくなかったので、その夜は横にはなったもののなかなか眠れなかった。 
どのくらい時間が過ぎたかよくわからなかったが、静まり返った部屋の外でエレベーターの動く音が聞こえた。 
この部屋はエレベーターに一番近い部屋で、俺は横向きに寝てて床に直に耳がついている状態だったから、その音がやけに近く直接響いてくるような感じだった。 
しばらくしてエレベーターが止まり、ドアが開く音がした。 
どうやらこの部屋のある三階に誰かが降りたようだった。 
今は多分もう夜中の四時を回ってるくらいの時間のはずだ。 
この階の住人でそんなに遅い時間に帰ってくる人がいたのかと、俺は少し変に思った。 
するとエレベーターはまた降りて行き、それから 
ズルッ ズルッ 
とひどく力のない、靴を擦りながら遅く歩いているような、足音が聞こえてきた。