[気づかない]
親父の体験談 
        
15年位前、親父が出張で東京に3日いってたことがあった。 
親父が帰ってくるとすごい神妙な顔をしているもんで 
みんなで何があったか聞いたんだ。 
        
そしたら、出張の3日目は向こうの人たちが東京観光に連れて行ってくれたらしくて 
色んなところを回ってたらしいんだ。 
そしたら、親父を案内してくれてた人がこう言った。 
「私って霊感が強いから昼間でも見えちゃうんですよ。」 
親父は根っからの理系だから幽霊とかそういうの信じない人だから 
適当にあしらったらしいんだが、その人が親父が信じていないのを見て 
「この世にはね、自分が死んだことを認めたくなかったり、気づいてなかったりで 
 霊になってさまよっている人がたくさんいるんです。 
 ほら、あのベンチの前の男の子がいるでしょう。あの男の子は自分が死んだことに気づいてないんですよ。」 
そしたら男の子がトトトって走ってきて、 
「おじちゃん、どうして分かったの?」 
といって泣きながら走っていった。連れの人いわく 
「気づかせちゃったかな。。。」 
        
親父は馬鹿にされてるような、不思議な気持ちで、昼飯を食べに行った。 
そこでも連れの人は、カウンター席のカップルを見て 
「あのカウンター席の女の人もさっきの男の子と一緒ですね。 
自分が死んでしまったことを認められないんです。」 
        
しばらくしてカウンター席の男の人がトイレに立つと、 
女性がこちらに走ってきて、 
「お願いですから、彼にはそのことを黙っていてくださいね。」 
といってカウンターに戻っていった。 
        
みんなの友人や家族、恋人は死んでないよな? 
いや、もしかしたら、俺が、わたしが、、、