[B子とC子と893]

俺の友人に一人だけ霊感があると言う奴がいる。
仮にAとするがそいつは「どうせ信じないだろ」っていって俺以外の奴には霊感うんぬんの話は一切しなかった。
付き合いは長いものの俺が知ったのは一年ほど前の事で893絡みの金銭トラブルに
巻き込まれた時の事をふとこいつならいいか…と打ち明けた時に皆色々抱え込んでるんだなって
ボソっと漏らした程度でいくら俺が「信じるから!」といっても
「知らん人間が語ったらあかんで…」と寒気を感じるような押し殺した声で呟くだけだった。

しばらくは俺たちのタブーとして一切触れずに過ごしてたんだがある日の夜同級生の女(B子)から
カラオケのお誘いを受けて、むこうはバイト先の友達(C子)も連れてくるってんで俺はAを誘った。
4人で二時間ほどカラオケした帰りの車の中でC子が私には小さい頃から霊感あって云々…の話を突然し出したもんだから俺は焦ってAを見たが助手席で「へー」とか「そっかぁ」って相づち打つ程度で目立ったアクションは無かった。


女の子を送った帰りAがドンキホーテに行きたいと言い出したので二人で向かった。
普段Aはオシャレやファッションとは無縁の人間なんだが帽子が欲しいと言い出したので
俺は「おっ、色気付いたか!もしやさっきの女のどっちかを気に入って!?」と思い
あれやこれやと提案したが「お前のセンスで決めてくれ」と言うので俺のオゴリだとキャップを買ってやった。

Aは買ったそばからその帽子を目深にかぶり終始無言…。
帰りの車の中で俺は帽子も含めて気になって仕方なかったので「なぁさっきのC子ちゃんて…」というと
「ねぇよ」と即座に食い気味に返された。
さらにまた押し殺したような声で「気持ち悪りぃ…クズマ○コが」と吐き捨てたので
「なんか嫌な事でも言われたんか!?」と俺は焦って聞くがAは
「……あんな汚いもん久々に見たわ。お前に帽子まで買ってもらう始末になるし」
と意味不な事ばかり喋り続けた。
とりあえず普通じゃない気配に俺はもうこの話題には触れずAを送ってその日は帰った。

しばらくお互い忙しかったのもあってAとは会ってなかったんだが
俺が寝てる時に携帯が鳴ったので寝ぼけて電話に出るといつぞやの893だった。
「久し振りやのぅ、元気しとるんけ兄さん?なん…べん!も電話したんやけどの」
「………、お宅らとは念書まで書いて縁切ったはずやけど…」
「え!?何!?もっとハッキリ喋ってくれ!!あのなぁC子っちゅう子知っとるやろぅ!?」
この時点でテンパリつつトラウマがっつりフラッシュバックしつつお目めバッチリな俺は色々考えながら
「知らん。人違いちゃうんかいな、お宅らとは関わりたくない…」
と何とかしらばっくれるが893はほとんど俺の話しなんか聞いて無い
「わしらかてお前みたいなもんと関わりたくないがな!ところがやな、まぁ聞きいなぁ
 C子っちゅうのを追っかけとったらな、うちの姪っ子の友達や言う事なんや、B子のな
 お前もようよう知っとるやろ!?B子はわしの姪っ子に当たるんや
 ほんで蓋開けて見たらわしの姪っ子のお友達がお前やったいうわけや!?」

……!!俺がトラぶった893の実の姪っこがB子だという事実に俺驚愕
「知らんは…そんな事。初めて聞いた。とにかくC子なんて奴知らんよ、もう切るで…」
「何!?電話遠いのぉ、お前今どこおんねん!?まぁええ、なんぞいい絵描けんかのぅ?」
すなわちC子捕獲作戦に協力しろとこの893は言いたいのだろうが俺はとにかく関わりたくなかったので
「だからC子なんて知らんゆうてますやん。お宅の姪っ子さんに聞いてくれ」と言って電話を切ろうとしたが
「……まさかお前なんかわしの事いろて……またしょうもない絵描いてのと違うやろなぁ?」
鳴り響くドスの聞いた声に半泣き&勘弁してくれ状態
「C子なんて女ほんまに知らんし……B子ともあれから会ってない」
「なぁ○○君や、あんたさえうんと言ってくれたらな、わしも安心なんじゃ」
上から下からこの上無いしつこさに俺ついに根負け…
「B子に聞いて、なんぞ言って見る…どうせお宅からB子に強く言えへん理由が……」
「そうか!?ハイハイわかったよ!!」プチッ...ツーツー……
相変わらずの理不尽さにトホホな俺

続く