[プロジェクトA]
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 車を勝手口脇に乗り付け、車外に出た。
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 勝手口から食堂に入った。
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 食堂の奥の照明スイッチまで約10mを歩いた。
 その間に背後で勝手口のドアがゆっくりと閉まり、ガチャリと閉まる音がした。
   ↓
 照明スイッチに辿り着きスイッチを切った。
 真っ暗で何も見えなくなった。
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 携帯TELの灯りで足元を照らしながら勝手口に戻った。
   ↓
 勝手口のドアノブに手を掛けて回した。
   ↓
 開かない?・・・??
   ↓
 ガチャガチャと回す・・・開かない!

ドアが開かない!
鍵がかかっている!!
勝手口の鍵を中から閉めるには、ドアノブのツマミをガッチャリと90度回す必要あり。
ただそのツマミは回りにくく、ドア自体を下から持ち上げるようにグッと引き上げつつ回さなければ鍵がかからないという要領があった。
ちなみに最初からツマミが回っていたなら鍵の金具がひっかかってドアは閉まらない。

自然に勝手にかかったり、扉が閉まる勢いでかかるような鍵ではない!
しかし、かかっている!

背筋が猛烈に寒くなり、全身に鳥肌が立った。冷や汗が一気に噴出した。

もう色々と想像する前に、とにかく必死でツマミを回し開錠して外に出た。
すぐに携帯TELの灯りを頼りに勝手口の鍵を鍵穴に差し込み、ドアをグッと引き上げながら回転させて施錠した。
エンジンをかけたままの車に飛び乗り、一目散に出発した。
バックミラーやサイドミラーは絶対に見ないようにして走り、一番近いコンビニの駐車場に入って一度車を降り、店内で落ち着いてから帰宅した。

そんなことがあった。
それ以来、私はR社に夜一人で残るようなことは絶対にしない。
"おじさん"の話を聞いた時にR社の社員の一人にはじめてこの話をしてみた。
その人は、ちょっと困ったような表情で私のことを見ていたが

「・・・今年は、いろいろありましたね」

とつぶやくに留まった。

それ以来、R社に伺っても、"おじさん"の話はしていない。

R社の社屋は2007年夏に全面リフォームされた。

その後、おかしな現象は収まったらしい。
今ではまた以前のように、R社の社員は夜遅くまで事務所で仕事をしている。 

もう一連の不幸は終わったかと思っていた。
でも最近Lさんが交通事故で、Kさんと同じように亡くなった。
棺の中のお二人は、ともにお顔はきれいだった。

まだ連鎖は続いているのか?
実のところは単なる偶然が重なっているだけだとは思う。
が、ここ数年でR社とZ社で亡くなった社員は「A」に深く関わった人だけだと思われる。
決して人数の多くない私の部署の朝礼で
「えー、すでにご存知のことと思いますが、昨日、○○の○○さんが…」
って話を何度聞いたんだ。


私の健康状態もあまり良くない。
時折、不安を覚えるのです。


以上、もし最後まで読んでくださった方がいましたら、どうもありがとうございました。
疲れたので寝ます。おやすみなさい。


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