[プロジェクトA]
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◇R社(お客さま)
 ◇責任者Pさん(50歳代):特に問題なし。今も元気にうちの会社とお付き合い頂いている。

 ◇担当者Qさん、Sさん(40歳代):同上

 ◇担当者Tさん(当時30歳代)
  2006年6月下旬、新幹線の車内で心臓発作により急逝。
  もともと心臓疾患はなく業務中の急逝でかつ過労気味だったため労災扱い。
  ご遺族との裁判にまでは至らなかったが、R社では大変な騒ぎになった。

 ◇担当者Uさん(当時50歳代)
  2006年秋、がんで亡くなった。

Kさんが亡くなり、数週間後にMさんが死にかけ、その数週間後にTさんが亡くなった。
KさんとTさんの葬儀には私も参列した。
まだ若いお二人との別れ・・・葬儀場はもう、なんとも言えない空気だった。

最近行われたLさんの葬儀も悲痛だった。

若い人の葬儀は、本当にきついですね。

「A」の頃からずっと、R社の事務所では、毎晩遅くまで事務や営業の社員の方々が残業していた。

しかしKさんTさんの不幸があり、Uさんが病床で亡くなる頃、R社で夜に残業する人はいなくなっていた。
2006年初秋の頃だ。
夕暮れに用事があって18:30頃にR社に行ってみると施錠され真っ暗で誰もいない。おかしいな。だいたいいつも21:00頃までは誰かしら残ってるのに・・・
そんな風に、R社の社員が誰も残業しない状態がしばらく続いた。

ある日「皆さん最近は早くお帰りなのですね」と、R社の数名に事情を聞いた。

皆、口を揃えて


「出るの」


と、そっと小さな声で答えてくれた。

おばけが怖くて夜に誰も残らなくなったらしい。

毎晩ではないが、20:00頃になると30cmほどの妖精のような「小さなおじさん」が事務所内を駆け回り始める。
また玄関近くの観葉植物の陰から2mを越す「大きなおじさん」が佇んでじっとこっちを見ていることが頻繁にあるらしかった。
 
彼らは”駆け回るだけ””そこにいるだけ”で、おどかしたり話しかけたり危害を加えては来ない。が、気持ちのいいものではない。
大小の"おじさん"たちの顔には、誰も特に見覚えは無いとのこと。
しかし「見覚え無しという事にしているだけで実は…」という話のように思えた。
"おじさん"などという言い方をしているのは、知っている顔だからなのだろう。私はもうそれ以上聞かなかった。

"おじさん"たちの姿は人によって見えたり見えなかったり。見える人の中には「もういやだ」と少々ノイローゼ気味の人もいた。
しかし社長には見えない。社長はちょいとワンマンで厳しい方なので、社員は「なんとかして欲しい」と訴えづらいらしかった。
私自身は、小さなおじさんとか大きなおじさんとか、そういうのは見えない体質だと思う。
海外旅行先のホテルでめっちゃいわくつきの部屋に泊まったときはさすがにちょっと怖い目にあったが、霊感などは無いと思う。

でもR社事務所内で、私も一度だけ怖い体験をしていた。

2006年5月下旬のその夜。
10日ほど前にKさんが仕事を遺して交通事故で亡くなってしまった後を引き継ぎ、私はR社事務所内で作業していた。
仕事の期限は目前。Kさんの遺志を成就させるべく、私は必死で最終段階のシステムテストをこなしてた。

事務所内には私一人残っていた。責任を持って消灯と施錠を行う約束で、R社に無理を聞いていただいていた。

午前1時過ぎ、作業終了。施錠を確認しながら各部屋を消灯して回った。
残るは食堂。食堂を消灯して食堂の勝手口から出て、外から勝手口の鍵をかければ完了。

しかし勝手口の外には電灯が無いため、消灯して外に出ると足元が危ういくらい視界が真っ暗になる。
昼間もだが、夜間にはほとんど誰も来ない場所なのである。
私はまず自分の車を勝手口の脇に乗りつけ、施錠を済ませたらすぐに乗車できるようにした。

そして次のように行動した。

続く