[謎のセダンと中国人]

去年まで勤めていた会社の話です。

本社と別に営業所があり、私は営業所のほうで図面を書いていました。
本社のほうには職人さんがいて、現場作業はそちらが動く、というよくある形です。
その職人さんの中に中国人がおり、いわゆる不法滞在でした。(以後Kさんとします)
しかし真面目で仕事熱心で力持ち、仕事内容も細部まで妥協なくやり通す…
サボるという言葉は彼の辞書にありません。
そして本国にいる妻の治療費に充てた借金を返すんだとニコニコと語り、自分は徹底した節制ぶり。
今でもこんな(ステレオタイプと間逆の)中国人は本当にこの人だけです。はい。

話は戻りますが、携帯で話してる後ろでゲコゲコと蛙の鳴き声が聞こえてしまう頃です。
「本社前に黒尽くめのセダンが停まったと思ったら、写真を撮って慌てて去っていった」
という物騒な目撃談が耳に入りました。893?それとも警察?
その後すぐにKさんが落ち着きがなくなり「友達の所に用事がある」と珍しく欠勤。
後日出勤はしていましたが、下宿していた所に姿は見せずかなり遠い所から通っているらしい…
と噂をしていると、突如姿を消しました。消したのか。消されたのか。
どう考えてもあのセダンが関わっている気がしてなりません。
そんな考えを巡らせる中で社長から「Kの携帯に履歴が残るから絶対に電話はするな。」と釘を刺されました。
心当たりがある、という事なんでしょう。

「おかけになった電話番号は…」

公衆電話からかけてみましたが既に使われていませんでした。

その後しばらくして、営業所で残業をしている時です。
徹夜で作業をしている時、真夜中だというのに突然電話のベルが鳴りました。
びっくりして電話を見ると「本社」と登録名が光っています。4時11分。この時刻は何故か目に焼きついて離れません。
呆気にとられていると2コールで切れてしまい、履歴を追いますが履歴には残っていません。
何故か猛烈に嫌な予感がし、かけ直す気になれませんでした。
気持ち悪い。いや、待てこれはネタとしては面白いし(ねーよ)早速今日本社行ったら話してやろうw
とビビりながら内心そういう考えも芽生えつつある中

「ガチャン」

と神棚に立ててる植木?みたいなのが倒れました。もうビビって総毛立ちました。
振り向いて神棚を見ている間、凄く静かでした。社内ってこんなに静かだったかな?
朝になり確認しましたが、「そんな時間に人がおる訳ない」と一蹴されました。

続く