[業]
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部屋に案内されて、改めて話を聞くと供養して欲しい女性は3名。

曾爺ちゃんは屋敷の人間がその3名の死因に関わっていると思ったので、
その辺は深くは聞かずに村に何か起こっているのか聞いてみた。

どうやら村では殺人が連続して起こっているらしい。

しかも、事件や犯人を警察に届けていなくて、
犯人は土蔵に閉じこめたり納屋に縛ってあったり、
死因も事故死・病死って事にして医者に見せずに土葬にするなどかなりヤバイ感じの処置をしていた。

現代なら(多分当時でも)死体遺棄&不法逮捕監禁で引っ張られるようなやり方をするからには、
村人を外に出したくない理由があると思えること。

曾爺ちゃんは突っ込み所が多すぎるのをグッと我慢(自分の身の為)して、
まずは犯人の一人会って見ることにした。

多分この屋敷にも居るのだろうが、
当代に案内されたのは屋敷から少し離れた農家の納屋だった。

納屋の中はジメっとして糞尿の臭いが酷く、
中には怯えた感じで縮こまっている女性が一人柱に縛られていて、
曾爺ちゃんは憑かれていたなって思ったらしい。

曾爺ちゃんはこの女性はもう危険じゃないことを教え、
暫く安静にしていたら今より良くは成るだろうって言いはしたが、
殺したのは多分旦那か子供だなと感じて可愛そうに思ったそうだ。

この人への祟りはもう終わっているが、多分完全に治ることは無いだろうって思えたらしい。

曾爺ちゃんは「供養はするが、あなた方は供養でどうにかなると思っているのかね?」って話したらしいが、
他に当たっても祟りがあってからは供養さえ怖がってしてくれないからお鉢が回ってきたらしく、
どうしても供養はして欲しいって事で曾爺ちゃんは供養することにした。

お墓の位置は村外れの山道を進んで行った山にあるらしく、
昔はそこに寺が有ったが、廃寺となった後はそのまま村の墓地として利用しているとのこと。
案内されてそこに近づくにつれて悪寒がしてくるし、
案内していた当代はどんどん顔色が悪くなってくる。

これは半端じゃないって思い、
とりあえず墓の方向に向かって経をあげて様子を見たが、
どうにもならない感じなのである程度の道筋を聞いて当代を帰したそうだ。

当代に活を入れて返した後、暫く進むと何かにすれ違った。

曾爺ちゃんには姿は見えなかったが、多分彼女らの誰かだろう。

その気配は当代を追うわけでもなく、また、自分を追う様にも感じなかったので、
気を落ち着けながら先へ進むことにした。

山の斜面を這うように進む山道を歩いていくと開けた場所があり、
斜面にそって卒塔婆や墓石が並んでいるのでここがその墓地だろうと感じて中に入っていくと、
多くの盛り土の墓の内にこの墓がそうと判るくらいの存在感がある墓が3つあったらしい。

曾爺ちゃんはそこで経をあげて供養を試みたが、
ずっと空気が重く、どっからか視線をずっと感じる。

「無理だな〜業が深い」と思って屋敷まで引き上げたる事にした。

屋敷まで戻った曾爺ちゃんは、
当代に供養試みたがこのままでは祟りは収まらないことを言った。

そして、
「あなた方は業が深いので言えないことも多いと思う。
三人を死なせたのにも関わっているだろう。
しかし、祟りが無かったものが何故祟る様になったのか何でも話せる事があれば言いなさい」
と言ってみたそうだ。

当代も言い辛かっただろうが、話した内容はこうだった。


父にあたる先代は乱暴で狡猾な人物だったそうで、若い頃から問題ばかり起こしていたそうだ。

それでも先々代が存命の内はまだマシな方で、先々代が亡くなると素行に歯止めが効かなくなった。

多くの村人を巧妙に利害で巻き込みながら悪事を繰り返し、
村では誰も逆らうことが出来なくなってしまったそうだ。

祟っている3名の死にも先代は関わっているらしい。

それから先代は三年前に実の妹に殺害された。

多分これが最初の祟りじゃないかとのこと。

そして、祟りで死ぬ前にあの3名の女性と関わりのある男に罪を着せて殺している。

もちろん私刑だ。

それ以来、村では身内や血縁者を殺してしまう事件が時々起こるようになった。

続く