[田舎]
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こんなの寝られるわけがない。

外はもう墨をぶちまけたみたいに真っ暗なのにまだ夜9時。
明日の朝6時くらいまでの辛抱か。このいたたまれなさがあと9時間続くのか。
もう帰りたい。なんとか気を紛らわせたくて、布団の中で俺は携帯をいじっていた。

その時 ギシッと背後のふすまの方から床のきしむ音がした。

人がいる。
なぜ俺に声をかけてこない。
ケータイの光が漏れてるのはわかるだろう!!
俺が起きてるのはわかってるのになぜ声をかけない!!
こっちをうかがってるのか!!!???

俺は怖くなりすぎて、ふすまに背を向けたまま逆に間抜けな寝とぼけ声で話しかけた。
「トイレですかぁ〜?」

キシ…と足音が遠ざかる。

返事はない。
返事をしてくれ!!!1なぜ存在を隠す!!!
こっちをうかがってるんだな!!!1俺が寝てたらどうする気だった!!!!!

もうここにはいられない。
俺は深夜2時頃しずかに荷物をまとめ、
一応「ありがとうございました、急な用事があるので帰ります」という旨の書置きをした。
足音には十分気をつけたが、きしむ音は防げない。神にいのるような気持ちで居間の前を抜けた。

砂を踏みしめる音が出るのが怖かったので靴は手に持ったまま靴下で玄関から出た。

バイクの鍵を外し、ここでエンジンをかけるわけにはいかないのでバイクを押そうとすると、
ひどく重くぐにゃりと嫌な手ごたえがあった。前後輪とも、タイヤの側面がぱっくり切られて
パンクしていた。


なんか変な笑いがこみあげてきた。
ああ俺とんでもないところでとんでもないことやっちったんだ。
もうやべえよ。

何かどうでもよくなってその場でエンジンかけてタイヤばこばこ言わせながら走って逃げたんだけど
ガソリンも抜かれててすぐ止まっちゃって結局オッサンにつかまちゃって今オッサンの家で
これ書かされてるの。
たすけてなんつってっ冗談ですよ。冗談n すみなせん


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Part198
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